「対面で会うこと」は政治家のアイデンティティに直結

しかも、議員の世界は「対面業界」と言っていいくらい、対面で会うことの価値が高い。有権者との接触をどれだけ増やすか、何回握手するかが票に直結する世界ですから。議員は、永田町で仕事をする時間を除けば、なるべく地元を回って地元の人たちのところに顔を出します。対面で会うことが、議員としてのアイデンティティにつながっているんです。

一方、オンラインの画面で行う打ち合わせは、全員の顔が画面に同じサイズで映りますから、序列がありません。対面であること、序列や力関係を示すことがアイデンティティになっている国会議員が、オンラインの関係を嫌がることは察しがつきます。オンラインの文化は、容易に受け入れられないでしょうね。

必要なのは、若手が自由に意見を言える文化

国会議員は非常に序列がはっきりした世界で、3選くらいされないとモノが言えるようにはなりにくい。初当選の議員なんて論外です。せっかく若手が増えても、昔の慣行が維持されてしまうという、構造的な問題があります。

永田町に必要なのは、当選回数に関係なく誰もが意見が言える文化です。一挙に世代交代が起こったりすると変わるでしょう。または政権交代があると、それまでの慣行を否定して新政権のフレッシュさを打ち出そうとするので、それも変化のきっかけになると思います。

若手議員が増えれば、コミュニケーションのやり方も変化してオンラインに対する抵抗もなくなるでしょうし、ファクスはさすがになくなるでしょうね。ファクスなんて使ったことのない若い人が議員になるんでしょうから。

議員が「偉い」国、議員が「偉くない」国

若手議員の多い国としては、北欧が知られています。たとえば先日34歳の女性首相が話題になったフィンランドは、45歳以下の議員が47%(2017年)を占めています。ノルウェーは、20代の議員の割合が世界一高く、13.6%を占めています。

こうした、国による議員の年齢構成の違いは、各国の議員の社会的地位や権限の違いが関係しています。例えば日本を含む東アジアの国々の議員は、権限が強くて社会的地位も高いので、序列関係がはっきりしています。議員の平均年齢も高い傾向があり、若い議員の権限も弱い。

一方、北欧などでは議員がそれほど「偉くない」のです。兼業の人も多く、ボランティア感覚で地方議員になってから国政に関わるようになります。女性も若手も「地域のコミュニティに貢献したい」と気軽に議員になります。だから議員の間でもフラットな関係が築かれ、コミュニケーションもオンラインかメールでいいということになるというわけです。

日本の議員のように、「偉い」人たちの集団だと、なかなかそういきません。序列が大切ですし、それを維持することが議員という職業の目的になってしまいます。