そういう人はね、なるべくマイナーな趣味を始めるといいよ。メジャーな趣味は優秀な人がいっぱいいるから、60歳から頑張っても上にはいけない。だから、マイナーな趣味がいい。

虫捕りなんていいよ。蝶やクワガタなどメジャーな虫は研究し尽くされている。だからマイナーな虫がいいね。

例えば、横浜国立大学の名誉教授で青木淳一さんというダニの世界的な権威がいる。今、85歳ぐらいかな。ササラダニというダニの研究で、定年までに300種以上を発見して名前を付けた。でもさ、ダニを趣味にする人はあまりいないし、新種を見つけても弟子と研究仲間ぐらいしか褒めてくれない。だから僕は「カミキリムシとかやったら」って言ったんだけど、嫌だって。「カミキリムシは上がたくさんいるだろ、絶対追いつかないから嫌だ」って。その後、ホソカタムシっていう、あまり研究されてない甲虫のグループを一生懸命研究し始めて、あっという間に日本の第一人者になったよ。

新種を見つけると、自分で名前を付けたりもできるでしょ。自分が死んでも、永久に図鑑に残る。楽しいよね。青木先生は78歳のとき、「人生で今が一番楽しい」って言っていた。いい人生だよね。蝶やクワガタじゃ、こうはならなかった。

ただ、マイナーなものがいいと言ったけど、誰もやってないものはお勧めしない。理解してくれる人がいないから面白くない。ちょっとは知られているもので、なるべくマイナーなものがポイントだね。あと、夫婦で同じ趣味だと、時間や費用の感覚を共有できていいよね。

天皇家も生き物がお好きなんだ

新種といえば、先日、上皇陛下が新種のハゼを見つけて論文を書くというニュースがあったね。陛下はずっとハゼの研究をライフワークとしてやっておられてね。まだ皇太子だった頃、魚類学会に来られて、一番前に座って熱心にお聞きになっていたと人づてに聞いたことがある。

天皇の家系は、みな生物学の研究をされていて、昭和天皇はずっとヒドラを研究されていた。今の天皇陛下が幼少の頃も、皇居に弟さんもみんなで集まって、虫を捕ったりしたんだって。雅子さまも虫がお好きなんだよね。僕の友達で日本蛾類学会の会長の岸田泰則っていうのが、雅子さまが小学生のときの生物部の先生で。岸田は「俺、雅子さまに展足させた、展翅させた」とか「標本作らせた」とか嬉しそうに言ってたなあ。

(構成=力武亜矢 撮影=的野弘路)
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