習熟したチームを持つ病院を選ぶこと

図1:「心カテーテル」治療数別病院分布

図1:「心カテーテル」治療数別病院分布

一方、症例数で4つのグループに分けて見たところ(図1)、半年間に49例以下と症例数が少ない群が最も多かった。

「カテーテル治療は外科手術と同じように、チームでその治療に習熟している必要があります。そういう意味では、カテーテル治療を受けると決まっている場合には、ある程度症例数が多い病院を選んだほうがよいでしょう。しかし、それ以上に大事なのが『適応』です。患者さんに複数の治療法を提示し、それぞれのメリット、デメリットをきちんと説明してくれるかどうかが重要です」

榊原記念病院の住吉徹哉副院長(榊原記念クリニック院長、循環器内科医)は、そう強調する。

最近は、冠動脈CT検査が普及し、カテーテル検査を行わなくても、動脈硬化が進んで血管が狭くなっているかどうか比較的簡単にわかるようになった。そのため、特に症状がなく生活習慣の改善や薬物治療で様子を見ても大丈夫な人でも、カテーテル治療を勧められかねないという。

また、カテーテル治療とバイパス手術のどちらの治療法がよいか、その方針が、病院によって異なる場合もある。

一般的に、バイパス手術の適応になるのは、PCIを何回か受けても狭窄を繰り返す人、左主幹部(根元)に病変がある人、三枝病変(3本の血管に狭窄がある)の人などだ。

「例えば、冠動脈が狭くなっている部分が短く1カ所ならカテーテル治療が適していますが、比較的若い人で左主幹部に病変がある場合にはバイパス手術を勧めます。どの治療法が適しているかは、病変の場所や形態、年齢、合併疾患の有無によっても異なります。身内だったらどういう治療を選ぶか、親身になって考えてくれる病院を選んだほうがよいでしょう」

住吉副院長は、そうアドバイスする。

カテーテル治療は再狭窄が起こる危険性が20?40%あるのが弱点だったが、薬剤溶出ステント(DES)の出現で、再狭窄が激減した。しかし、DESを留置した場合には、血栓症を予防するために、血液を固まりにくくする抗血小板薬を長期間服用し続ける必要がある。40代、50代でDESを入れて、将来、がんなどの病気で手術が必要になったらどうするか。それを考えると、年齢や本人の価値観によっても、どの治療法を選ぶかは変わってくるわけだ。

※すべて雑誌掲載当時

※ランキングは1607病院のDPCデータを使用。2009年7~12月の6カ月間の退院患者についての治療実績。「―」は10例未満、または分析対象外とされたもの。

(Getty Images=写真 ライヴ・アート=図版作成)