コロナ禍での「販促ノウハウ」の共有は急務

今、世の中は空前の「商売のノウハウ不足」である。

従来の商売が通用しなくなり、ビジネスの常識はこの半年間で大きく覆された。もう一度ゼロからノウハウを積み上げなくてはいけない状況だが、いかせん、目の前の売り上げを作るのが精いっぱいで、現場では定型だったノウハウが構築されていかない。

また、新型コロナウイルスの感染状況は刻一刻と代わり、昨日まで通用していた販促ノウハウが、今日になったら突然使えなくなることが日常茶飯事で起きている。ソーシャルディスタンスが求められる中、ネットやSNSの活用が肝となるが、専門知識が無いアナログな企業にまで情報が回らないため、今まで以上に商売の勝ち負けの差が開き始めている。

集客方法や販売方法が枯渇している中、中小企業同士の儲けのノウハウの共有は急務といえる。しかし、世の中の「儲かって申し訳ない」という雰囲気があるため、儲けのノウハウは世の中に出づらい状況がずっと続いている。

「ガンプラ」を売り始めた自動車販売店

行き詰まった雰囲気を打開するためにも、どんな些細なことでもいいので、コロナ禍で売り上げを作れる販促ノウハウを、商売人同士で共有してもらいたい。

例えば、私が日経MJで取材した山形県鶴岡市の自動車販売店「アローズ庄内中央店」は、東日本大震災の際、従業員を励ます思いで、スタッフが好きだったガンプラを仕入れて販売することにした。すると、お客様の中に「懐かしい」とガンプラを買い求める人が出始めて、次第にガンプラだけを買い求めるお客様も増えていった。やがて自分の店のスタッフがガンプラを好きだったように、車好きの人にはガンプラ好きな人が多いことが判明。ガンプラを購入した人が車を購入するケースも多くなった。

ガンプラを販売しているアローズ庄内中央店
画像提供=アローズ庄内中央店
ガンプラを販売しているアローズ庄内中央店

自動車は高額商品のため来店頻度が低くなるが、ガンプラのように車好きと相性の良い気軽に購入できる商品を取り扱うことでお店のファン客を増やした。その仕組みを構築したおかげで、コロナ禍でも大きく来店客数を落とすことなく営業している。

この手法は、コロナ禍でも有効な販促手法といえる。消費サイクルの短い低単価の商品を取り扱うことで、第二、第三の集客の柱を作ることは、高単価を取り扱う商売において、少ない投資で集客力を回復させる手段になる。