今までの経験や人とのつながりがモノづくりに活きる日々

CSRに取り組み

自身も店長からエリアマネジャー、支店長とそれぞれの場で達成してきたことが認められ、次の仕事に活かされていく。昨年、経営企画室へ異動した深川さんは、2名の部下とともにCSRに取り組み始めた。

ファッション事業は、生産過程での環境負荷やファッションロス(衣料品廃棄)の問題など、さまざまな社会課題を抱えている。そこで、アダストリアでは、社会課題と事業との関連性を考慮し、「環境を守る」「人を輝かせる」「地域と成長する」という3つのテーマを掲げて取り組みを行ってきた。

例えば環境を守る取り組みとして、オーガニックコットンなどのサステナブル原料の積極的な使用や加工方法の見直しなどを行っている。在庫を抱えて事業を行うという特性から生じるファッションロスに対しても、衣料品在庫の焼却廃棄をゼロにすることを決定し、在庫は新規ビジネスやリサイクル・リユースに活用するなど意欲的だ。そのほか、冒頭の「REBAGシュウカン」にも力を入れている。

ショッピングバッグがわりに無料配布した「マイバック」

ショッピングバッグがわりに無料配布した「マイバック」

また、深川さんはものづくりに携わるメンバーと連携しながら、新たなプロジェクトも企画している。そのひとつが任意団体コオフクとアパレルメーカー3社で取り組む「CO-FUKU masQ/コオフクマスク」だ。障がいのある人が抱えるマスクの困りごとや課題を理解し、新たな発想とアイデアでマスクをリデザインし、製品化するプロジェクトである。

「自分も病気を抱えていたことで、なかなか人に理解してもらえないことの大変さがよくわかる。そうした経験もあり、『人を輝かせる』というテーマにおいて、『自分らしくファッションを楽しめる社会』をビジョンに掲げているアダストリアのものづくりを活かすことで、その悩みやニーズに応えていけるのではないかと考えました」

そのような自らの気づきや思いを形にするとき、今まで築いてきた人とのつながりに助けられることも多く、すべての経験が今に活きていると実感するそうだ。

サステナブルに過ごしていくために心掛けるべきこと

サステナブルな事業を推進するならば、そこで働く人たちも長く活躍できる環境づくりが欠かせない。さまざまなストレスが重なり、一時は仕事を辞めようとまで考えた深川さんは、どう心がけているのだろう。

「自分の意思をきちんと伝えることで周りの人たちも支えてくれます。ひとりで解決できないと感じたことは抱え込まず、早めに上司や同僚に相談するなど、周りに頼ってやっていくということもコツなのかなと思います」

アダストリア 経営企画室 シニアマネージャー 深川智子さん

今はオフの生活も楽しんでいるという深川さん。運動で身体のバランスを整えたり、好きな料理で体調に合わせて食事を変えたり、「健康オタクかも」と朗らかに笑う。

自分のライフスタイルも“サステナブル”が肝心なのだろう。

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。