高齢者向けの住まいや制度はさらに増える

高齢者が自宅や土地などを担保に、自治体や金融機関から一括または年金の形で融資を受け取り、利用者の死亡時に相続人が担保を処分して元利一括で返済するリバース・モーゲージ制度もある。だが、相続人の承諾など手続きが面倒なこともあって、利用する例は少ない。

それならばいっそのこと自分の意志で家を売り、そのお金を生活資金に部屋を借りてもらう。高齢者向けの賃貸住宅が増えている背景にはこんな事情がある。

これだけは押さえたい! 老後を暮らすための基本原則

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現役世代には、優遇金利の住宅ローンや住宅減税など、あの手この手で持ち家を奨励し、日本人の持ち家志向を刺激する。個人消費を刺激し、景気を拡大させるという意図もあるが、国にとっては、固定資産税などの税収増も期待できる。

そのおかげで定年ごろまで借金生活を強いられる。従来の住宅スゴロクが機能していれば問題なかったが、それは崩れた。いまや年金だけでは食べていけないと生活保護の申請に駆け込めば、自宅を担保にするなら助けてやるという。それが嫌なら賃貸住宅があるので、自宅を売ってしまったらどうか、これが国の意志なのだ。

今後、高齢者向けの住まいや特例制度はさらに増えるだろう。老後の住み方の選択が広がるかもしれない。しかし、国は“ゆりかご”の面倒は手厚く見ても、もはや“墓場”までの面倒は見られなくなっている。

先立つものは、結局のところお金だ。貯蓄と住まいのフロー化は、老後のための必須条件となった。

(構成=山下知志 撮影=熊瀬川 紀)