今回、注目するべき点は、グローバルでの危機に直面したときに、どこから資金が流出し、どこに資金が集まっているのかを見ておく必要があります。IMF(国際通貨基金)によると、2月から3月にかけて外貨準備高の減少が大きかった国・地域は、ブラジル(193億ドル)、トルコ(156億ドル)、インドネシア(95億ドル)、韓国(90億ドル)、香港(78億ドル)などとなっています。一方で、この期間に外貨準備高が増加した国もあります。

韓国の外貨準備高の内訳は…

日本のように、そもそもコロナの影響下のなかで外貨準備高が増加している国も存在していることをここで留意しておきます。日本の外貨準備高は2月の1兆3590億ドルから6月の1兆3831億ドルまで一度も減少することなく増加を続けています。日本を含め、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどは増加していました。一方で、世界全体を見ても、2~3月のコロナショックに、総じて脆弱ぜいじゃくな新興国は、外貨準備高が大幅に減少しています。

韓国の外貨準備高はここ数カ月、増加傾向にありますが、ソウル聯合ニュースにより5月時点での外貨準備高の内訳が報道されていますので見ておきましょう。有価証券が約90%、預金は約7%となっており、預金での保有率は低いです。さらに、有価証券の内訳も政府債、政府機関債、社債などの流動性が低い資産の比率が高く、株式などの流動化資産の比率は低い傾向にあります。ウォンが急速に下落するような危機の際には、ドル売りウォン買いの介入が必要であり、その際には「ドルの現金」が必要となります。上記のように、流動性の低い資産で保有していることから、「ドルの現金」の保有額は少なく、危機の際に現金化するためにはタイムラグを要する状態にあるのです。

韓国のドル不足から財閥に泣きつく

3月のウォンの大幅下落に対しても、米国FRBとのスワップ協定にはこぎ着けており、いったんは日韓通貨スワップの議論は終息の模様を見せていましたが、これまで述べてきたように、根本的には韓国でのドル不足状態は変わりないのです。実際、3月のドル不足のときに、韓国は国策銀行である韓国輸出入銀行が私募社債を、財閥のサムスン電子などのグローバル企業に対して引き受けてもらう形で、サムスン電子からドルを調達していたことが報道で伝わっています。

世界市場が不安に陥ってたときに、安全資産であるドル集め競争が激しくなり、韓国のグローバル企業が国策銀行のある意味“消防士”の役割を果たしたのです。文政権といえば、財閥改革も掲げていたわけですが、コロナショックの中では、財閥に救いを求めざるをえず、緊急時に国を支援してくれたのが財閥だったという皮肉なことになっています。