価値創造への4つの経路

セイカーがミシガン大学ビジネススクールのジェフ・デグラーフ、ロバート・クィン、キム・キャメロンの3教授と協力して開発した「競合価値モデル(competing values model)」は、組織の価値を生み出す活動を4つの分野に分類している。

(1)管理──この分野の価値増大活動には、リスク管理、プロセス効率の向上、コスト生産性の向上に取り組む社内のさまざまなプロセスがある。この分野の合言葉は「より良く、より安く、より確実に」だと、セイカーは『バリュー・クリエーター 人材と組織の価値創造を実現する』(ダイヤモンド社)で述べている。

(2)競争──この分野の合言葉は「株主価値を今、そして毎日、生み出そう」である。ここで重視されるのは、顧客満足プログラム、アウトソーシング、事業部門の整理、合併・買収など、外部を対象とする活動を通じて市場のシグナルに迅速に対応することだ。

(3)創造──この分野の価値増大活動は、新市場の育成や自社の製品・サービスの飛躍的なイノベーションの促進に関わる活動だ。これらの活動は多くがリスクを伴う。「管理」分野や「競争」分野の活動より成功の可能性が低いし、成果が出るまでの時間も予想がつきにくいのである。

(4)協働──この分野の重点は、組織のコンピランシー(能力)を築き、適切な文化を生み出すことにある。活動には、リーダーシップ開発プログラムや社員維持プログラムなどがある。他の分野の活動に比べ、この分野での活動は時間がかかる。また、それらが生み出す目に見える価値を測定するのも困難である。

組織と同じく個人も、成功するためには4つの分野すべてで活動を行う必要がある。しかし、人間というものは自分が最も関心のある分野や活動を選びがちだ。そのうえ、価値創造活動を表す語彙やそれをモニターする基準は分野によって異なるため、人々は「自分の分野や部署の活動によって創造された価値はたいてい過大評価し、他の部署によって創造された価値はたいてい過小評価する」と、セイカーは言う。