午後の眠気は脳のハーフタイム
そもそも脳が眠くなるというのは、神経細胞と神経細胞の間で情報を伝達するタンパク質のリン酸化が、脳の活動限界を知らせている状態です。まだ情報が届けられていないタンパク質は静かにしていますが、情報が届けられるとタンパク質にリン酸基が追加されてリン酸化します。これでタンパク質の形が変わり、隣のタンパク質をリン酸化することができます。リン酸化したタンパク質がまた隣のタンパク質をリン酸化して情報を伝達していきます。
このリン酸化が時間を数えるタイマーのような機能を果たしていて、一定の時間になると活動が限界になります。これが眠くなった状態です。そこで眠ると、リン酸化がリセットされ、また情報を伝達することができるようになるという仕組みであると考えられています。
私たちは、午後の時間帯に「集中したいのに眠い」と感じますが、脳にとってはハーフタイムのような感じなのかもしれません。午後の眠気を、後半戦に向けて作戦を立てる時間としてとらえ直してみて、「計画仮眠」を使ってみましょう。
睡眠データを1週間~1カ月分眺めると見えてくるものがある
最近は、スマホやウェアラブル端末で、睡眠のデータを記録している人も多くなっています。ただ、今まで睡眠のデータをうまく活かしている人に出会ったことがありません。
複数の睡眠データを使って、「こっちでは深睡眠が50%と出ているのですが、こっちでは20%と出ていて、どっちが本当なのでしょうか」と聞かれることさえあります。
私は、生体データをビジネス化することについて、様々な企業から相談を受けるのですが、「膨大なデータがあるのですが、これを何かに使えないでしょうか」という相談がほとんどです。データは、あるだけでは役に立ちません。取得する目的は行動の質を向上させることであって、振り回されたり、デバイスへの不信感のもとになるのは本末転倒です。もし、睡眠データをとっているとしたら、1日の睡眠のデータは生体リズムを整えるのにそれほど利用価値はありません。それよりも、2週間や1カ月という長いスパンでデータを並べてみてください。1週間以上のデータを並べる画面を開くと、自分が1週間のうちで絶対に眠っている時間帯である、コアタイムが見つけられます。
コアタイムが見つかったら、できるだけそのコアタイムを伸ばすように生活リズムをつくってみましょう。コアタイムを伸ばし始めたら、ぜひ、日常生活でパフォーマンスを測れる基準を使って、自分のパフォーマンスの変化を比較してみましょう。やみくもに週末に寝だめするより、コアタイムを伸ばす方がパフォーマンスが向上していることがデータから分かれば、根拠ある最適な行動として採用しようと思えるはずです。