2012年、文春編集長が「スクープに絞る」と宣言

そんな中、2012年4月に週刊文春編集長に就いた新谷学は、「うちはスクープに絞る」と宣言した。以前、私がエルネオスという月刊誌で、新谷編集長をインタビューしたことがある。そこで彼はこういっている。

「文春は少なくともロス疑惑報道の頃からスクープ、スキャンダルがわれわれの最大の武器であるというところについては、今に至るまで大きく変わっていません。それが結果的に文春の特徴を際立たせる結果になって、あっと驚くスクープが時には飛び出す雑誌であるという存在が注目を浴びていると思うんです。

どういうターゲットを選ぶかということに関しては、思いついたものをやっているだけですよ。例えば宮崎さん(謙介元衆議院議員)という人の育休不倫がありましたけど、あの人はもともと女性の噂が多い人ではあったんです。ただ小物ですよね。ところが育休宣言をしたことによって、俄然、脚光を浴びた。

いったいどんな人間なんだ。この人には女の話がいろいろあったから、もう一回きちんと調べたらおもしろいかもしれないとデスクと話して、取材を始めたら間もなくして現場から、地元の京都で不倫をしているという話が上がってきました。すぐ張り込めと指示したら、三日で撮れたんです」

なぜスキャンダルは週刊文春に集まるのか

黒川弘務東京高検検事長の「賭け麻雀」スクープは、文春によれば、文春オンラインにある情報提供サイト「文春リークス」に、産経新聞の人間が情報を寄せ、それをもとに取材を始め、現場を特定して写真を撮ったという。

新谷編集長の志を継いで現在の加藤晃彦編集長もその路線を突っ走っている。古巣である現代の“惨状”を見ている私には、文春の頑張りがうらやましくてならない。

だが、先ほども触れたように、いつの時代もスキャンダルはあるのだ。だが今は「噂真」はない。写真週刊誌もかつてのようにスキャンダルを毎号追っかけるようなことはできない。ポストは知らないが、現代にスキャンダルを持ち込んでも、かわいそうないい方になるが、そうしたネタを扱える編集者も、取材できる記者もほとんどいなくなってしまっているはずだ。かくして、スキャンダルネタを持っている人間は、文春か、時々新潮に、持ち込むということになる。

もちろん、文春には、持ち込まれたスキャンダルの真偽を見分ける編集者や、そのネタをもとに、裏を取り、ファクトを積み重ね、ものにする取材力のある記者がいるからできることは間違いない。