大量の「はずれ宝くじ」を発掘

ほかにも引き落とし口座の印字から、使っていないクレカや、車関連のカードの年会費も発見したので、すぐに退会を申し出た。が、これがとても面倒くさい。家族がかけているといっても「ご本人さまとお話をさせてください」と言われる。「電話口に出すのはいいですが、高齢なので細かい話は理解できないですよ?」というやりとりを何度もして、「規則なんです」と、向こうもしつこい。仕方なく、父親に「使っていないカードの年会費が無駄に落ちているので止めたい」と話をする。お金の損害に対しては敏感なので、理解をしめした父に、「今からかかってくる電話に出て、聞かれたことに答えてその後、私に代わって」といって対応してもらい、なんとか解約できた。

そのほか、父の部屋を探索して出てきたもので、当初不可思議だったのが、たくさんのはずれた宝くじだ。「そんなに宝くじが好きだったのか?」と思うほど、けっこうな量のはずれ券。父は病気になる前からごみを捨てられず、そういうものも全部ばらばらと棚に入れているので、本当に頭にくる。

田中 亜紀子『お父さんは認知症』中央公論新社
田中 亜紀子『お父さんは認知症』(中央公論新社)

「なんであんなに宝くじがあるの?」と聞くと、母が昔、地元の銀行の宝くじつき定期預金に入っていたからで、年に数回銀行から送られてくるという。一回の枚数は少なくとも、長年の積み重ねでの枚数なのか。「当たったことはあるの?」と聞くと、「ほとんどないね」と。もっとも定期預金の利息は普通にあって、そのほかに特典として宝くじが送られてくるということだ。事情がわかったので、こんなにはずれくじをためこんで! とかたっぱしから捨てた。

が、その直後、宝くじには「はずれくじの日」があり、9月2日のその日に過去1年のはずれくじに向けて抽選がおこなわれ、敗者復活戦があると知ったのである。

あぁ……。もしかしたら、昨年から今年にかけてのはずれくじの中に、大当たりがあったかもしれなかったのに。人知れず煩悶した。

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