ダンス部顧問が始めた「オンライン部活」

「女子部ダンス部」の顧問をしている氷室薫教員の事例を話そう。氷室教員は社会科の教員として、オンライン授業の準備を手探りで行っていた。それと同時に、女子部ダンス部の指導もオンラインで挑戦しようとしたのである。

「宝仙学園女子部ダンス部」は宝仙の名物の一つだ。昨年は高校ダンス部で初めて世界53カ国が出場したHIPHOPダンスの世界大会に出場という栄光をつかみ、またフジテレビの「FNS27時間テレビ にほんのスポーツは強いっ!」のグランドフィナーレにも出演した。彼女の指導力は熱く、生徒たちに説得力がある。政府が緊急事態宣言をした休校の時期に、部員の生徒たちがリアルの部活に求めていた情熱を、オンラインで再現できないかと試みたのである。

部員たちは練習したかったが、「密集、密閉、密接」の3密禁止もあり、集まって活動をすることはできなかった。そこで、部員たちの「つながりたい」という熱い想いに応えるため、彼女はオンライン部活を手探りで始めた。

オンライン部活とはどのようなものかを言葉で解説するよりも、動画を見てもらったほうがはやい。ビデオ会議アプリで教員や先輩部員がダンスの動きを説明し、部員たちはそれぞれの場所で実践する。それに対して、教員が指導をするというものだ。

「自撮りレッスン動画」の送りあいで、ダンス指導

2月29日に一斉休校になった直後は、「休校は3月いっぱいだろう」と彼女は考えていた。だが、その1カ月間をただ休むだけでは部員たちが運動不足になる、ダンスの感覚を忘れるなどダンススキルの低下を危惧した。

そこで、部員たちが自宅にいてもダンスの練習をする方法を考え始めた。最初はなかなか思い浮かばなかったが、「1カ月中にベーシックでこれだけやってほしい」という基本のダンスを練習してもらうため、レッスン動画を作ることにしたのだ。

最初はiMovie(アイムービー)というアプリを使い、彼女は自撮りしたレッスン動画を部員たちに送った。すると、数日後に部員全員からそのダンスを練習している動画が送られてきたそうだ。彼女は部員全員の動画を見ながら、「ここができてないよ」、「ここがこうだよ」とコメントを返していった。

場合によっては、部員の動画を見ながら自撮りして、「ここはこうだね」、「ああだね」と動画付きの返信までしたという。まさに、オンラインによるマンツーマン指導だった。こうしたやり取りの後に、少し変化が生まれた。

部員たちが動画で、彼女にどんどん語り掛けてきたのである。そして、3人の部員が、テレビ会議システムのZoom(ズーム)を活用し、「今日何食べた」、「今日こんなことやっているよ」、「こんな映画、見た」などと会話をする様子を、部活内で発信してくれるようになったのだ。