景気の見通しと、結婚・出産意欲

では景気後退は少子化問題にどのように影響するのだろうか。リーマン・ショック時の景気悪化と少子化の関連について第一生命経済研究所がレポートを公表している。同研究所のレポートによると不況が深刻化した08年9月に行われた調査を分析した結果、景気の見通しと結婚・出産意欲には相関性が認められたという。具体的には、特に既婚者において景気が悪くなるほど第2子以降の出産意欲が低下していたのだ。

日本では人口維持のために、1人の女性が生涯に産む子供の数の平均数を示す「合計特殊出生率」を30年までに2.07に回復させるという目標が掲げられている。近年、日本の合計特殊出生率は1.4前後で推移しているが、ここで第2子以降を産み控える動きが出れば、人口維持どころか少子化を加速させる要因のひとつとなるだろう。

その後、景気がやや回復してきた09年9月に第一生命経済研究所により行われた調査では、未婚者の結婚への意欲、既婚者の出産意欲は共に上昇していた。

不況時の子育て支援策には効果あり

09年9月時点での完全失業率は5.5%と依然として高い値ではあったが、調査対象者に「景気回復への見通しが立った」という感覚があることが確認され、その景気回復への希望が結婚・出産意欲の上昇につながったと見られているのだ。この調査結果から、同研究所は、不況時における経済的支援等の子育て支援策には、景気後退を要因とする結婚・出産意欲の減少を緩和する効果が期待できると提言している。

ここで参考に子育てにどれほどお金がかかるのかを見てみたい。旧AIU保険(現AIG損害保険)の試算(2005年)によると、子供1人あたり0~22歳までにかかる子育て費用は、主に衣食住等に充てられる養育費だけでも約1640万円かかるという。その1640万円をベースにベネッセコーポレーションが教育費をプラスした子育て費用を算出しているが、幼稚園~大学まで全て国公立だった場合の総額は約2600万円、全て私立だとすると約4100万の資金が必要という結果となった。平時でさえ「産まない」または「理想の子供数を持たない」理由として「経済的な不安」が挙げられる。コロナ不況により、経済が停滞し十分な対策がないようなら、国民が出産に消極的になるのは自然の流れだと言える。