(2)職務はシェアできるか

われわれの調査で判明した最も典型的なジョブ・シェアリングは、「60%・60%」という取り決めだった。2人の人間がそれぞれ基本給の60%を受け取り、週に3日間勤務するというもので、毎週少なくとも1日は2人が同時に勤務する。この重複のおかげで、相手が最近関与したやりとりやプロジェクトや決定について、それぞれが十分に説明を受けることができる。

ジョブ・シェアリングを成功させるために最も重要な要因は、ポジションを分かち合っている2人のあいだの優れたコミュニケーションと協働である。これが実行されれば、ジョブ・シェアリングは、1人ではなく2人の人間のスキルと経験が成果を生むという点で、組織にとって大いに利益になりうる。

大手製造企業のカスタマーファイナンス担当取締役は、価格設定や交渉に関して営業パーソンをサポートすることを職務とする全国の18人のビジネス・マネジャーを統括していた。ビジネス・マネジャーのポジションに1つ空きができたとき、2人が、チームとしてそのポジションに応募してきて(1人は営業畑、もう1人は財務畑の人間だった)、それぞれが週に3日勤務する60%・60%の取り決めを提案した。

はたしてうまくいくのかという若干の疑念と、合計で120%の給与を払うことへの軽い不満はあったが、取締役は彼らを採用した。彼らの相互補完的な経験や能力は、彼らがサポートする営業パーソンにとって大きな力になることが判明した。組織の観点からは、彼らのパフォーマンスが売り上げに与えた影響は、給与の割り増し分、20%を補ってあまりあるものだった。

では、マイナス面は何だろう。60%・60%のジョブ・シェアリングは、1人の人物が100%の給与で働く場合より高くつく。しかし、われわれがインタビューした多くのマネジャーや幹部が、きわめて有能な2人の人物が1つの職を分かち合うとき、それがもたらす価値は給与の割り増し分を補ってあまりあると述べた。もう1つの懸念は、一方の人物が人生の危機──たとえば病気──に陥った場合、他方の仕事量が増え、そのため育児のための出費が増えたり、家族と過ごす時間が減ったりするおそれがあることだ。念頭においておくべき最後の点は、時間を経るなかで、そのジョブ・シェアリングが必要でなくなる可能性があることだ。そのため、この取り決めを年に1度は見直して、いつでも変更、廃止できるようにしておくべきである。