【スティーブ】カタカナをなぜか巻き舌で強調する人はたしかにいる。海外の取引先とのミーティングでやたらと「ニュウヨォォク」とか「ロ、サァンゼルス」とか、海外の地名をなぜかネイティブ風に声を大にして喋る上司がいてね。実際は発音がおかしいし、毎回その瞬間、謎な空気が会議室に流れる。

辛酸なめ子=イラストレーション
辛酸なめ子=イラストレーション

【カナコ】私はそういう人がいると「海外にどれくらい住んでたんですか」って笑顔で聞いている。だいたい私より短いから「本当? 私も12年アメリカに住んでいたんだ」って言うと急におとなしくなる。調子こいてすみません的な。

【ライアン】帰国子女にもヒエラルキーがあるんだね(笑)。多少英語が喋れてもやっぱりLとRの発音の区別ができない人は多いよね。僕はライアン(Ryan)って名前だけど、どうしてもみんなからLyanと呼ばれる。日本にはRの発音がないことはわかっているけど、やっぱり自分の名前だし、間違って呼ばれていい気はしない。最初はおちょくられているのかな、と思ったよ。

英語が喋れないことでビジネスの機会損失をしている

【スティーブ】基本的に、日本人には「うまいかどうかなんて本当に気にしてないから、積極的に英語を喋って!」と言うけど、たしかに変な英語が全く気にならないかといえば、ウソかな。

【カナコ】アメリカのブラックユーモアなコメディアニメとか、日本人だけじゃなくて、いろんな国の変な英語アクセントを誇張して描いているよね。バカにするな!とは思っちゃうけど。

カナコさん(仮名)、辛酸なめ子=イラストレーション
カナコさん(仮名)、辛酸なめ子=イラストレーション

【スティーブ】でも、やっぱり下手でもいいから、もっと積極的に英語を喋るべきだとは本当に思っている。

日本の会社は英語が喋れないことでビジネスの機会損失をしていると思っているよ。例えば海外のブランドが日本で展開したいと思っているとする。彼らは日本のことがよくわかっていないし、日本の市場やビジネス文化をよくわかっている“エージェント”となるパートナー企業を日本で探すんだ。でも、彼らとしては日本でただ自分たちのものを売りたいのではなくて、彼らが育てたブランドも守りたいから、そういう密なやりとりができる企業と取引したい。英語ができないとそういったやりとりは難しい。

僕は日系企業の外国人として多くの外資と取引をしてきたが、そんな悩みを持っている外資は本当に多い。自分で言うのもなんだけど、うちの会社は僕が英語を喋れるってだけで契約を成立してきたよ。

【ライアン】それはすげーや!(ライアンとスティーブがハイタッチする)