「エクササイズの制限は行き過ぎ」に反論続出
個人が特定されかねない写真がSNSに上げられ、非難があっという間に集中したのは行き過ぎだろう。しかし、それだけこの緊急事態下でウイルスのさらなる拡散を国民が協力して必死に食い止めるべき段階にあるという意識が高まっているのだ。
SNSなどで流れた写真や動画により、非難を浴びることとなったこのエリアを管轄する組合は、即座に地元メディアの取材に応じ、「組合も最大限の努力をしている。モントキアラの住民のほとんどが、生活必需品の買い物以外、自宅を出ないでいる」と訴えた。
また、ほとんどのマンションで、ジムやプール、プレイグラウンドなどの設備は閉鎖しており、エリア内で活動するランニングクラブも自宅でエクササイズをするよう呼びかけていると主張、火消しに追われている。
ちなみに、ジョギングをした11人が拘束された当日、地元紙「マレーシア・キニ」のオンライン版には、「人々が単独で出かけることやエクササイズに行くことは許そうではないか」と題する記事が掲載された。エクササイズやジョギングまで制限するのは行き過ぎではないか、という内容だったが、コメント欄にはこんな反論がずらりと並んだ。
「もし一人がジョギングに出ることを許すならば、結果としてそれは何人もが自宅を出てジョギングに向かうことになり歯止めが利かなくなるだろう。今は自らを犠牲にして耐え忍ぶときである」
「医療関係者などが最前線で寝る間も惜しみ必死に働いている中で、このような悠長なことを言っている場合なのか」
「このような記事を掲載するメディア自体もどうかしている」
公園の利用もすべて禁止
また、感染者数が日々100人以上更新され続ける中で、身近なところで感染者が出はじめていることも、マレーシア国内で危機意識が急速に高まっている要因の一つだ。
クアラルンプール市内中心部にほど近いエリアで暮らす、マレーシア人男性モハメド氏(65歳・仮名)もつい数日前まで自宅周りのジョギングをしていた。自宅があるエリアはセキュリティガードが常駐、小さな公園もあり、清掃や消毒も管理組合により行き届いている。そのため活動制限令が敷かれて以降も、そのエリア内に住む住民らは朝や夕方になるとごくわずかな距離だが気晴らし程度にジョギングしていたという。
しかし、数日前になって管理組合から緊急の伝達メールがあった。モハメド氏の自宅からほんの数メートル離れたなじみの知人一家の祖母が、新型コロナウイルスの検査の結果、陽性反応が出たというのだ。管理組合からはエリア内の住民に対し、「陽性患者の出た一家は、公園内の遊具に触れたりベンチに座ったりなどはしていないことを確認済みだが、今後公園の利用やジョギングなどもすべて禁止する」などと、SNSを通じて通達がなされた。