スティーブ・ジョブズはiMacでコンピュータの形を革新し、大ヒット商品となった。だが、アナリストたちは当初、「こんなものが売れるはずがない」とiMacを酷評していた。アップルでブランド戦略を担当した河南順一氏は「彼は自分の信じるものに対しては一切の妥協を許さずブレない人間だった。その“妄想”が最高のものを生み出した」と説く――。
※本稿は河南順一『Think Disruption アップルで学んだ「破壊的イノベーション」の再現性』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
当時のユーザが求める「2つのもの」が欠けていた
破壊的イノベーションは視点が前向きになってはじめて起きるもの。過去の実績やデータをつぶさに分析し、市場の表面的なニーズを満たすことばかり考えていては、どうしても「常識」の範疇に収まってしまい、ありきたりの発想しか出てこないからです。
たとえば、1998年に発表されたiMacは、スティーブ・ジョブズの思い描く「インターネット時代にふさわしいコンピュータのあり方」が色濃く体現されていたものでした。それはあまりに未来志向で、その先進的なデザインや衝撃的な低価格を絶賛する人たちがいた一方で、一部のアナリストは「こんなものが売れるはずがない」とiMacを酷評しました。なぜなら、iMacには当時のユーザが求める最も大事なものが2つ欠けていたからです。