「医系技官」は最近のドラマや映画にしばしば登場する“花形”

最近、医療ドラマが数多く制作されているが、この「医系技官」が登場するドラマはあまりない。

海堂尊の長編小説『チーム・バチスタの栄光』に登場する白鳥圭輔は「厚生労働省・大臣官房秘書課付技官兼医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長」という肩書で大学病院に多発する医療事故を解決する。映像化もされていて、映画(2008年公開)では阿部寛が、またテレビドラマ(2009年放映)では仲村トオルがこの役を演じている。筆者が見たところ、おそらく白鳥圭輔がドラマに初登場した医系技官だ。

また、映画『シン・ゴジラ』(2016年公開)に登場する厚生労働省医政局研究開発振興課長の森文哉(演・津田寛治)は、ストーリー中で医系技官と明示された初めてのドラマではないだろうか。彼のセリフ内に「遺伝子情報の解析」「血液凝固剤」などがたびたび登場し、「医師免許を持っている」ことを匂わせている。

「医系技官」がアンチ厚労省に走りやすいワケ

図表に、歴代の医系技官の著名人をまとめた。特徴的なのは、在職中に「アンチ厚労省」の本を出版したり、退職後にテレビのニュースバラエティ番組などで厚労省批判のコメンテーターとなったりする人材が目立つことだろう。

国交省や農水省などにも「土木」や「森林」などの分野で技官が採用されているが、退職後に元職場の批判活動をするようなケースはほとんどない。

理由は簡単だ。

参院予算委員会で山中伸弥氏が所長の京都大iPS細胞研究所の事業予算に関しての質問を聞く厚生労働省の大坪寛子官房審議官
写真=毎日新聞社/アフロ
2020年1月29日、参院予算委員会で山中伸弥氏が所長の京都大iPS細胞研究所の事業予算に関しての質問を聞く厚生労働省の大坪寛子官房審議官

「官僚は、辞めればタダの人」だからだ。キャリア組官僚の生涯収入は、現役中よりも退職後の再就職先に依存する部分が大きいと言われる。そして再就職先を確保するためには出身省庁ともめないことが必須となる。女性スキャンダルが報道された原子力保安院の審議官や財務省の事務次官が役所と争うことなく辞めたのも、「再就職先の確保」という生命線を握られているからであろう。

では、医系技官はどうか。こちらは「官僚を辞めても医師」であり続ける。

大坪審議官はもともと「私立医大(東京慈恵会医科大学)の学費約3000万円」を出せる富裕層の家庭の出身者であり、医師免許があれば役所を敵に回しても食べていくには困らない。そうした背景が、あの厚労省での記者会見や衆院予算委員会での「やけに堂々とした答弁」にはあるのではないだろうか。自分もそうだが、医師免許を持った女が開き直るととても怖いのである。