いつもは行列の店もガラーン「普段の何十分の一の客数です」

思い返せば2011年の東日本大震災直後の京都が、いまのような感じだったのかもしれない。だが、その後、国内外の観光客数が飛躍的に伸びた。近年では6年連続で年間観光客数5000万人を突破。過剰に増える京都の観光客、特にインバウンド増で生じている観光公害については、昨年12月12日に本連載で「外国人を集め日本人に敬遠される京都の未来」として述べたとおりである。

渡月橋を中心とする嵐山周辺を、私はほぼ毎日散策しているが、観光客は目に見えて減っている。渡月橋の近くに、常に行列のできる有名なコーヒーショップがある。行楽シーズンでは、30分待ちはざらだ。しかし、私が訪れた時(2月6日、7日)は客が誰もいなかった。臨時休業かと思って店内をのぞくと、「やっていますよ」との店員の声。

嵐山のメインストリート(2018年夏)と現在(2020年2月)
撮影=鵜飼秀徳
嵐山のメインストリート(2018年夏)と現在(2020年2月)

「先週(1月最終週)から徐々に観光客が少なくなり、今週(2月2日以降)に入って客足がピタッと止まりましたね。中国と韓国の人が常に多かったですから、その両方がいなくなった感じです。普段の何十分の一の客数でしょうかね」

京都市の外国人宿泊客数のトップは中国(117万人、2018年)で、4位が韓国(30万人、同年)である。新型コロナウイルス騒ぎが、今後、京都の観光にどのように影響を与えるだろうか。

つい先日、京都で2人目のウイルス感染者が出た。感染者は、観光客を相手にした接客業の人だった。そのニュースも影響したのだろう。たとえば「試飲」「試食」が、スルーされている。京都の土産といえば「漬物」「抹茶のお菓子」「八つ橋」などである。いずれも、試食してから購入するのがお決まりだ。だが、コロナ騒ぎで心理的に躊躇ちゅうちょしてしまうのも致し方ないところかもしれない。

人力車の車夫「本来、京都の冬はこんなものでしたからね」

売り子さんもマスク姿であるため観光客も警戒し、なかなか、試食や試飲を受け取らない。つらいところだ。

京都の嵐山や東山に展開する人力車の車夫も、暇を持て余しているよう。「本来、京都の冬(閑散期)はこんなものでしたからね」と、自虐的にさらりと話す。

そんな閑散とした京都だが、普段は気づかない発見があったのも確かだ。

寺社仏閣や土産店を散策する修学旅行生が目についたことである。海外旅行者の総数がぐっと減ったせいで、修学旅行の学生の存在が際立っているのだ。相対的に、本来の日本人旅行者の割合が増している。四半世紀前の京都にタイムスリップしたような気分になった。

商売をしている人には申し訳ないが、やはりこの10年の京都は、異常なバブル騒ぎだったと思う。バブルは必ずはじけるもの。このタイミングで一度、冷静になって観光と市民生活の共存こそを考えるべきだろう。