そのとき小沢氏の私党と化す
民主党が政権を取る場合、単純計算で100人近くの新人が当選する。彼らをどうマネージするか、これが民主党の命運を握る。郵政選挙では自民党に83人の新人議員が誕生した。だが4年たち、自民党の戦力に成長した1回生議員は数えるほどしかいない。民主党は、4年前の自民党を他山の石として新人教育を徹底させることが必須事項だ。
俄然、存在感を示すのが小沢氏だ。小沢氏は、他の幹部が軒並み内閣に入る中、党にとどまり選挙対策などの党運営を牛耳ることになるだろう。そこで、新人議員たちに「小沢流選挙術」をたたき込む。そのこと自体は、党の体力をつける意味でも好ましいことだ。ただ、この過程で初当選議員の大部分が小沢チルドレンとなる。小沢派「一新会」の大増殖だ。
90年代初頭、自民党内で100人を超える最大派閥・竹下派が日本の政治を支配し、小沢氏はその数の力を背景にらつ腕を振るった。衆院選の結果、小沢氏は再び100人を超える集団を従えて政権を支配しようとするかもしれない。そうなれば、民主党は小沢氏の私党と化す。
代表選で岡田氏を支援した玄葉光一郎氏、野田佳彦氏らは、衆院選後の小沢チルドレン増殖に過剰なほど神経を尖らせている。5月20日、都内のホテルには50人の民主党議員が集まった。岡田氏を支援した議員の「打ち上げ」名目ではあったが、非小沢勢力の数の力を示しておこうという狙いがあった。双方の多数派工作は、早くも始まっている。
悲願の政権奪取という共通の目標の前で、今は薄氷の挙党態勢を保つ民主党。だが、いったん目標を達成すると内包していた党内対立が再び表面化する。現代政治の歴史に残るような政権交代の後も、20年以上、永田町で権力闘争を繰り広げてきた小沢氏の存在に注目が集まるのは皮肉な話ではある。
民主党が政権を担う本格政党と認知されるには、少なくとも過度な小沢依存体質から脱却したことを証明する必要があるのではないか。