「転売ヤー」は法律違反の可能性
このところインターネットなどで購入価格よりも高い金額で転売し、お金を儲けている人や組織が目立ちます。こうした人たちは「転売ヤー」などと呼ばれていますが、その中には大量のアルバイトを使って商品を買いあさっているケースもあるようです。そうした場合はどうなのでしょうか。
転売目的で小売店等から自分で購入した商品を第三者に転売する行為は、古物を仕入れたわけではなく、古物営業には該当しないため、古物営業の許可を得る必要はありません。このため個人で活動しているのであれば、「転売ヤー」であっても違法性はないと考えられます。
ただし、アルバイトなどに新品の商品を買わせ、それを買い取って転売している場合、それはアルバイトから古物を買っていることになり、さらに転売目的という点で反復継続性があり「事業」に該当すると考えられますので、古物営業の許可を得る必要があります。組織的な「転売ヤー」は違法性が高いと考えられます。
なお、破産手続開始の決定を受けて復権していない人、刑の執行を受けて5年を経過していない人、暴力団員、住居不定の人などは、古物営業の許可を得ることはできません(古物営業法4条)。
そして、古物営業の許可を得ずに、中古品販売の事業を営んだ場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります(古物営業法31条1号)。
過去には、中古の英語教材(CD、教本)をインターネット上のオークションやフリーマーケットで仕入れて、第三者に転売したとして、古物営業法違反の容疑で逮捕された事例があります。
古物営業法は、取引される中古品の中に窃盗等の被害品が混在しているおそれがあるため、盗品等の売買の防止や被害品の早期発見により窃盗やその他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的としています(古物営業法1条)。
チケット転売を規制する法律もある
仮に、無許可で誰でも古物営業を行うことができるとすると、窃盗等の被害品が中古品として売られてしまった場合に窃盗品の発見及び犯人検挙が困難となります。古物営業の許可を受けた事業者は警察の名簿に登録されますので、仮に、窃盗等の被害品が中古品として売られてしまった場合であっても、警察が古物営業の許可を受けている事業者に問い合わせることによって、窃盗品の早期発見および犯人検挙が容易になるということです。
さらに、コンサートのチケットやオリンピックのチケットなどを購入金額以上の金額で第三者に売って、差額分の利益を得る行為は、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(いわゆる「チケット不正転売禁止法」)によって禁止されています(不正転売禁止法3条)。
この法律が制定された理由としては、主に外国人を中心に、人気のあるイベントのチケットをバイトを雇って大量に購入させ、それらのチケットをインターネットのオークションサイトなどで高く売りさばいて、転売利益を得るといった事例が頻発していたためです。その結果、本当にそのイベントに行きたいと思っていた人が行けなくなり、また、高いお金を支払える人しかイベントに行くことができなくなるといった弊害が生じていました。