父と祖父から教えられたこと
――原さんが考古学者からベンチャーキャピタリストに転じたのは、留学先のスタンフォード大学で若手起業家と、彼らを支えるベンチャーキャピタルの存在を知ったからだそうですね。
はい。たとえばスティーブ・ジョブズなど大きな事業を成し遂げる若者の背景にはベンチャーキャピタルの存在があります。彼らは資金と経営力を提供し、無から有をつくる製造業そのものです。しかも技術を発掘し事業化するのですから、考古学との共通点を感じ私の天職だと思いました。
――世界的な企業に育った投資先も多いですね。
1つ具体例を挙げれば、サイバーセキュリティー市場で現在世界最大級のフォーティネットという会社があります。スタンフォードで博士号を取ったケン・ジーの考え方が、私がつくったパーベイシブ・ユビキタス・コミュニケーションズと呼ぶ開発思想に合致したので創業期に出資し、私も取締役となって大きくした会社です。
しかし技術がいくら良くてもフォーティネットが力を発揮する広帯域通信の時代がなかなか到来せず、米国での事業化には苦戦しましたが、ブロードバンド環境で先行していた韓国へ私がトップセールスに行き必要性を説いて第1号の売り込みに成功しました。こうした地道な努力が花開き、2009年に株式上場を果たしました。同じようなやり方で世界的企業に成長した出資先会社は十数社に上りますが、時代が追い付かず挫折した会社も多くあります。ちなみに、私は売り抜けることを目的としないので投資ではなく「出資」、投資先ではなく「出資先」と呼びます。