終身雇用制の終わりを予見していた

小嶋は『あしあと』(※)の中で、こう言っている。

※小嶋千鶴子自身が、81歳の時に刊行した自伝。一般には販売されず、イオングループ現役社員に配布される。

「4年生大卒者について見ると、入社時点で男女の能力差はないといってよい。今の需給関係からいって、相当質の良い女子大卒者が採用できるはずである」

続けて、「しかし、女性の場合、最終的には家庭に入ることを目的にしている人が圧倒的に多い。経営上から見ても、今しばらくは続くであろう終身雇用制の中での男子労働者と、この女子短期労働者の組み合わせはマイナスではない」。

1997年に書き記したものである。

いまから20年以上前に終身雇用の終わりを予見しているかのような視点に加えて、当時の女性はまだ結婚ということへの思いが強かったのであろう。

子育てを終えた「奥様社員」を募集

にもかかわらず、小嶋は女性が故の視点と企業経営者の視点で、相当早い時代から、この女性を戦力化するための数々の施策を講じている。

「女性で一番問題になるのは出産です。出産ということがなければ、能力的にも仕事の遂行上も、男女に差をつける理由は全くありません。しかし出産という事実がある以上、区別しないわけにはいかないのです」と言う。

すでに昭和30年後半には、これからの女性の社会進出がなされることを予見して、今では珍しくないが、「パートタイマー」の導入をいち早く行っている。

さらに、子育てを終了した女性に対しては「奥様社員」と称した社員募集を実施して、高学歴でかつ意識の高い奥様を社員化したのである。その後パートタイマーから社員(契約制社員)への道を開き、仕事の埋め合わせ的な存在から一定の条件を満たしており、なおかつ意欲と能力のある者対して安定した社員への道を開いた。