友人の受験に干渉する受験生の末路

「ねえ、●●ちゃんは、A中学校が第1志望校なんでしょう? わたしもそうなんだよね」

矢野耕平『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(文春新書)

ある女の子が小学校のクラスメートからそう話しかけられた。彼女はびっくりした。なぜなら、A中学校を第1志望校にしているのは小学校内では口にしたことがなかったからだ。しかも、そのクラスメートは別の大手塾に通っている。一体、どんなルートで漏れたのだろうか……。

それ以来、そのクラスメートは彼女から毎日のように志望校や学習状況について話しかけられるようになったという。

「●●ちゃん、この前の模擬試験の結果はどうだったの?」
「過去問っていま何年分くらい終わったの?」
「ほかにどんな学校を受験するの?」

そんな彼女に応対することが苦痛でたまらない彼女は、わたしのところに相談にやってきた。わたしはこう回答した。

「人間関係がもつれると面倒だからこう返答するといい。『塾から受験のことは小学校では絶対に話さないという指示が出ているから、詳しくは言えない』と」

受験した学校がことごとく不合格になってしまった

その後、クラスメートから彼女を質問攻めにすることはなくなったが、その代わりに、「自己アピール」が始まったという。

「わたしこの前の模擬試験でA中学校合格可能性80%が出た!」
「志望校別クラスでかなり上の位置にいるんだよね」
「『滑り止め』はB中学校とC中学校かな」

そう話しかけられた彼女は、「聞き役」に徹していたらしい。中学受験が終わり、無事にA中学校の合格切符を手に入れた彼女はこう振り返った。

「とにかくあの時間は苦痛でした」

そのクラスメートはどんな顛末を迎えたか。実は2月以降から小学校に通えなくなってしまったのだ。第1志望校のみならず、受験した学校がことごとく不合格になってしまったという。そのクラスメートは彼女ひとりを「標的」にしていたわけではない。聞けば、小学校の同級生たちに自分の志望校や成績状況などを言い振らしていた。だから、友人たちの前に顔を出せなくなってしまったのだろう。