ほぼ20代中盤で、最初の就労が終了している
ひきこもり歴を2つのパターンに分けると、学齢期から就労定着前までにひきこもりが始まった場合と、就労定着後にひきこもりが始まった場合がある。就労前のひきこもり開始は61事例中44事例だった。学齢期の不登校・中退が関係していたり、学校を卒業後、仕事に就くまでのあいだに何らかの課題を抱えたりした人が多い。一方、1年以上就労したのちにひきこもったとみられるケースも17事例ある。
短期の就労を含めて就労経験をみると「正社員」17事例、「アルバイト」23事例などの46事例である。就労開始年齢は平均20.7歳(回答があったのは34事例)、仕事を辞めた年齢は平均27.3歳(回答は32事例)だった。最初の就労は、ほぼ20代中盤に終了していることが分かる。
子どもが家族を避ける状態が続く
では、家族はどのような場所に相談したのだろうか。同調査によれば、「病院」40事例、「保健所・保健センター」23事例、「民間のカウンセリング機関」20事例、「精神保健福祉センター」19事例、「NPO法人」18事例という結果であった(複数回答)。特に精神医療関係の窓口が多いことが分かる。
問題を解決するため家族会に参加している人たちへの調査結果ということもあり、子どもが20代のころからいくつかの窓口に相談した経験がある場合が多いといえる。たとえば内閣府の39歳までの調査(2016)では、ひきこもりについて関係機関に相談したことがある人は44.1%にとどまる。それに対し、この調査の対象者は少なくとも家族会には参加している。しかし、61事例のうち子どもが家族以外の人がいる場に参加しているケースは14事例であった。多くの家族は、子どもが外に出られない、出られてもその場が限られていることなどについて悩み続けている。
61事例のうち、ひきこもりの状態は過去の経験も含めて「昼夜逆転」が50事例、「自室閉じこもり」が31事例にみられた。これらの背景には子どもが家族を避けているという情況が隠れている。親にとっては、子どもと一緒に食事ができない、コミュニケーションがとれない状態が長く続くことになる。