日本が参考にすべき中国のAI活用

——中国は2017年に「次世代人工知能技術発展計画」を発表するなど、国をあげてAIの開発に取り組んでいる。自動運転、音声認識、医療、スマートシティの4つが重点分野とされ、アリババはスマートシティ分野のリード企業に選定された。日本の参考になる事例もありそうだ。

【ミン・ゾン】AIは経済・社会のあらゆる側面に応用できるテクノロジーだ。都市の運営にAIを応用すれば非常に大きな効果がある。都市にも頭脳が必要なのだ。たとえば世界中の大都市では交通渋滞が頭痛の種になっているが、信号機をオンライン化し、AIでサポートすれば、青信号や赤信号のタイミングが最適化されて渋滞は緩和される。すべての車に走るべきルートをAIが知らせることもできる。

アリババが先行してAIを活用した都市交通管理システム「シティブレイン」を導入した杭州市では、すでに目に見える成果があがっている。武漢など他の都市への展開も始まっている。杭州市ではスマート・ガバメントの実現も目標に掲げている。身分証明書や医療保険証の発行など、政府のサービスはすべてワンストップで完了するようになり、そのすべてをAIがサポートする。

人類の文明は、さらにすばらしいステージに

——日本は経済停滞に加え、少子高齢化など構造的問題も抱えている。ITを活用し、こうした問題を解決するためのアドバイスは。

【ミン・ゾン】本書は未来に向けた新たな視点を提供しようとしている。今、世界では根本的なパラダイムシフトが起ころうとしている。そこでは経済や社会を「活性化」、「再生」するというより、「革新」によって新たな未来を構築するという発想が必要だ。

人工知能(AI)、IoT、そしてバイオテクノロジー分野の画期的業績など、数百年に一度の大きな変化が今起きており、経済構造やわれわれの暮らしは根本的に変わろうとしている。生産性が向上し、経済が繁栄し、多くの人がより良い生活を享受できるようになればいいが、短期的にはAIによる雇用喪失など深刻な問題も生じるだろう。

だが私は人類の文明が、これまでよりはるかにすばらしいステージに入ろうとしているのだと考えている。