長生きすると有利。
81歳10カ月を超えたら年金の合計額が多くなる
老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳。しかしそれを据え置いて、最長70歳(60カ月)まで繰り下げて受給することができる制度がある。「繰り下げ支給」と呼ばれる制度がそれ。65歳からもらわずに繰り下げを選ぶメリットは、繰り下げ1カ月当たりで受け取る年金額が0.7%増えること。つまり遅くもらい始めるほど年金の受給額が高くなるのだ。受給開始期間は1カ月単位で決められる。受給開始したい時期の少し前に裁定請求(年金をもらう手続き)をすればよい。
もらい始めた時点で増額された年金額は、その後ずっと死ぬまで変わらない。図のように65歳からもらい始めた場合を100%とすると、満額(国民年金に40年間加入した場合)で年間79万2100円(2008年度価額)だが、70歳からもらうことにすると、受給率は142%にアップし、年間の受取額は112万4800円となる。
65歳からもらい始めるのがいいのか、70歳からもらい始めるのがいいのかは、その人の寿命で左右される。年金受取総額で比較すると、81歳10カ月が分岐点となるようだ。これよりも長生きするのなら、70歳からもらいはじめたほうが受取総額が多くなる。そして90歳まで長生きした場合は、65歳からだと総額2059万4600円、70歳からだと2362万800円となり、約300万円も違う計算に!
65歳以降も会社で働いたり、自営業を続けるなど年金に頼らず生活ができて、長生きしそうな人は繰り下げ支給を選んでもいいかもしれない。しかし、この選択は個人個人の経済状況と健康状況で判断するしかない。こちらのほうが絶対トク、とは言い切れないわけだ。
老齢厚生年金にも同じような繰り下げ支給の制度がある。老齢基礎年金と合わせる必要はないので、どちらか片方だけを繰り下げることもできる。老齢厚生年金の繰り下げの場合も、1カ月当たりの増額率は0.7%と同率。ただし、65歳以前に支給される特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げできない。
また、60歳から65歳になるまでの間に老齢基礎年金を受け取り始める「繰り上げ支給」という制度もある。この場合は、1カ月当たり0.5%年金額が減額され、減額された支給額は一生変わらない。60歳からもらい始めた場合は、65歳時点の70%の受給率となる。どの受け取り方を選び、いつからどうもらうかはその人次第だ。