日本は離婚すると親権が父か母のどちらかにうつる。だが、こうした「単独親権」を採るのは、G20の中で日本とインド、トルコだけだ。ほかの国では離婚後も父母ともに親権がある「共同親権」のため、国際結婚ではトラブルが起きやすい。なかでも深刻なのが相手の了解なしに子どもを連れ去る「実子誘拐」だ——。
娘は車のトランクに入れられて「誘拐」された
2018年8月、東京・世田谷に住むフランス出身のヴィンセント・フィショ氏は、仕事から帰ると自宅が空っぽになっていたことに愕然とした。妻と3歳の息子、11カ月の娘が、忽然と姿を消していた。一体何があったのか……。
両親の離婚後、子どもの親権について父親か母親かのどちらかに帰属する「単独親権制度」を採る日本。「相手方に取られる前に子どもの親権を自分のものにしたい」と、ある日突然、実子を連れ去る「実子誘拐」が横行し、外交問題にまで発展しようとしている。
フィショ氏の場合、妻側の弁護士から後日「今後のご連絡等はすべて当職までいただきたい」とする紙切れ一枚が届き、以来、子どもと会うことはおろか、連絡を取ることもできず、何をしているのかもわからない状態だ。
後で防犯カメラの映像を確認すると、彼の娘は自宅のガレージから車のトランクに入れられて実の母親によって「誘拐」されたという。「実子誘拐は児童虐待で、深刻な人権侵害だ。日本はなぜこのようなことがまかり通るのか」と彼は憤る。