講師はみんな、かつての依存症当事者

施設に通うのは、週5回。午前と午後にそれぞれ講義があります。プロバイダーと呼ばれる講師は、みんな依存症から回復した当事者です。講義は、アルコール依存症者の自助グループで利用している「アルコホーリクス・アノニマス」(通称ビッグブック)というテキストを使います。そこに説かれているのが、世界で最も使われている依存症の回復プログラム「12ステップ」というものです。

12ステップは、アルコールや薬物、ギャンブル、買い物など様々な問題行動・行為からの回復に効果があるといわれています。

最初の第1ステップとして「依存症であることを認める」、次の第2ステップでは「自分を超えた大きな力が健康な心に戻してくれると信じるようになる」というように、まずは自分が依存症であることを認め、でも回復できると信じることからスタートします。

ステップを進めていくと、これまで生きてきた人生で、今も残っている後悔や恨みを解決させるための「棚卸し」や「埋め合わせ」といったものを行います。ステップを階段を登るよう順番にクリアしていくことで、依存症の人たちがより生きやすくなり、アルコールや薬物に向かわなくなる。

なんだ、気持ちの問題かと思うかもしれませんが、これを一人でやるのは並大抵のことではありません。施設では、担当スタッフがマラソンの併走者のように、心の奥底に溜まっている「恨み」や「恐れ」といった感情の洗い出しに付き合ってくれます。自分自身の問題を把握し、それを取り除いていくことで、薬やアルコールに向かわせない考え方が身についていくのです。

他にも知識として、アルコールから始まる依存症の歴史や、依存症になった脳のメカニズムなども学びます。また、行動として、繰り返し行われるスタッフ面談や、自助グループのミーティングに毎日のように足を運ぶことで、「頭」だけでなく「身体」を使って依存症から回復していきます。

通う人の背景は様々だが、みんな見た目は「普通」

私が通った施設は、様々なアディクション(依存症・嗜癖)の人が一緒に利用していました。薬物はもちろん、アルコールや、ギャンブル、クレプト(窃盗)、買い物依存や、恋愛依存の方もいました。仕事を休職して依存症からの回復に向き合うサラリーマンもいれば、依存症とうつを併発して、なんとか社会復帰を目指している人、家族の支えの元で通う主婦など、背景は様々です。皆、パッと見たところ依存症の当事者とわからない点が共通していました。

もう一つ共通していることがあります。それは、ほとんど全員と言っていいほど、イジメや虐待、差別、親から続く依存症の連鎖など、自分ひとりでは解決できない、根深い生き辛さを抱えてここにやってきているということです。