世界の大文明を理解する「4行モデル」

世界の大文明の人びとの行動様式を、4行モデルで表わすと、

(1)まず自己主張をする。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままでは、紛争になる。
(4)○○○○があるので、大丈夫。

のように書くことができるのだった。○○○○のところには、西欧キリスト教文明の場合は「法律」、イスラム文明の場合は「イスラム法」、ヒンドゥー文明の場合は「人びとが別々の法則に従っている」、中国儒教文明の場合は「順番」が入る。

まずは、「相手の様子をみる」

では、日本人の行動様式を、4行モデルで表すとどうなるか。それは以下のようになる。

(1)自己主張する前に、まず相手の様子をみる。
(2)相手も、同じことをしている。
(3)このままではなにも決まらない。
(4)みなで話し合って、決める。

世界の大文明の人びとと日本人とでは、行動様式が根本的に異なっていることに注意しよう。

1行目がまず、異なる。「まず自己主張をする」ではない。日本人は、「相手の様子をみる」。

自己主張するのは、それが最適な生存戦略だからだ。自己主張しなければ無視され、不利になる。日本人が、自己主張をあと回しにして、相手の様子をみるのは、そのほうが安全だから、やはり生存戦略のためである。日本では、ほかの人びと違って突出することは、攻撃されやすく、危険なことなのだ。

ぜひ注目してもらいたいのは、4行目、「みなで話し合って、決める」である。

日本の組織は、人びとを拘束するルールを決めることができる。その場にいるひと、その組織に属するひとは、この決定に従わなければならない。

このやり方は、江戸時代かそのもっと前の、農村共同体の慣行にさかのぼる。

このやり方は、近代的なものか。

近代的ではない。近代的な組織は、法律が行動の規準である。人びとは、社会に通用する法律に基づいて行動する。そもそも人びとは、自由と権利をもっており、それを制約できるのは法律だけである。組織が、施行規則のようなものを決めるとしても、根本の法律に反することはできない。