毎年5万人以上が集まるフィギュアの展示販売イベント「ワンダーフェスティバル」。「コミケ」と並び、日本のオタク市場を代表するイベントだが、今年6月、その中国版が上海で行われた。開催は2回目で、今回から日本未発表の商品も目立つようになった。なぜ日本のホビーメーカーは中国市場を優先するようになったのか――。
WonderFestival 2019上海(以下、画像はすべて筆者撮影)

“立体物”を愛する人たちのお祭り

6月8~9日、中国・上海で「WonderFestival 2019上海」(以下、ワンフェス上海)が開催された。ワンフェス上海は、日本国内で開催されているイベント「ワンダーフェスティバル」(以下ワンフェス)が中国へと“輸出”されたもので、昨年に続き2回目の開催となる。

日本のワンフェスは、1984年のプレイベントに始まる長い歴史を持つイベントだ。年2回開催のイベントで、メインとなるのは「ガレージキット」と呼ばれる商品の展示・販売。このガレージキットは、大手メーカーが生産するのが難しいニッチな題材の立体物や、市販品では実現できないクオリティーのフィギュアを求めたマニアが自力で原型を作り、少数量産したものである。

版権もののキャラクターを題材としたフィギュアなどに関しては、版権元からイベント当日に限って販売許諾をもらう形で運営されている。同時に、近年は大手メーカーの新製品発表の場としての側面も濃くなっている。つまり、立体物を愛する人々にとってのお祭りのようなイベントだ。

中国でフィギュアの需要が増大中

ワンフェスが昨年から上海で開催されている背景には、中国のフィギュア市場の盛り上がりがある。この数年、中国国内ではフィギュアの需要とクオリティーが共に上昇しており、大小のメーカーが増加。これを受けて、日本のホビーメーカーと中国メーカーが共にブースを出展し、さらに一般ディーラーとしてアマチュアの製作したガレージキットも展示および販売されるイベントが開催される運びとなったのだ。

2年連続で会場となった上海新国際博覧センターは、幕張メッセの約8倍(延べ床面積)という広大な展示場である。ワンフェス上海はこのセンターの17ホールのうち3ホールを使って行われた。日本のワンフェスは、近年は幕張メッセのほぼ全体を使用し、5万人を超える来場がある。ワンフェス上海の来場者数は不明だが、会場の広さや混雑ぶりを考えると本家と遜色ない盛り上がりを見せたといえる。

広大な「上海新国際博覧センター」

現地のモデラーによれば、中国ではフィギュアやプラモデルといった趣味は「若者の趣味」といった側面が濃い。確かに、40代前後の客層が多い日本のワンフェスに比べて、会場内の平均年齢は10歳ほど若く見える。これには、中国国内では模型やフィギュアといった趣味の歴史が浅く、高年齢のユーザー自体が少ないという事情が関係している。