現地企業の経営者=富裕層は「日本企業とは取引したくない」理由

4年ほど前、日系企業がインドでジョイントベンチャーを一緒に立ち上げるインド企業を探していたので、何社か現地の企業をピックアップしてコンタクトをとってみた。

最初に会うことになったのは、地元の州ではそこそこの規模を誇っている企業だ。もちろん、経営者たちはインドでは確実に「富裕層」に該当する。

当然、ノリノリのハイテンションで話に乗ってくると思いきや、

「日本企業とは取引したくない」

と、非常にローテンションなトーンで言われてしまったのだ。しかも、このようなケースが目立ち始めている。

これは、現地の不動産ブローカーと交渉する際も同じ。

インドで製造業を立ち上げる際、当然、まずは工場用地を探さなければならない。しかし、日本のようにインフラが整備されているわけではないインドで、工場に適した土地を探すのは一苦労だ。

そのためには、いいロケーションの土地をインド人ブローカーから紹介してもらわなければならない。ところが、私が紹介しようとしているクライアントが日本企業だと知ったとたん、急にやる気をなくす事例がぽつぽつ出てきている。

「何ごとも遅いから、待っていられないんだよ」

一体、「日本企業が敬遠される」理由は何なのだろうか。私は知人のインド人ビジネスマンにその理由を聞いてみたところ、返ってきた答えはきわめてシンプルなものだった。

野瀬大樹『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)

「とにかく日本企業は何ごとも遅いから、待っていられないんだよ」

「ジョイントベンチャーで新しい会社を共同で立ち上げよう!」という話が盛り上がっても、当然すぐに「OK!」とはならない。まず、合弁計画を本社で何カ月も協議。そして、予算を組み取締役会を通すことになる。

もちろん、この段階で「GO!」とはならない。すべての役員間での調整が済んで初めて、ようやく実際の条件交渉に突入。そこで話がまとまったとしても、まだまだ終わりではないから、インド人にはたまらない。

条件交渉が妥結したらしたで、今度は契約書ドラフトのレビューとなり、本社法務部での気が遠くなるほど長い回覧作業が待ち受けているのだ……。