NHKは公共放送の立場を自覚しているのか
NHKの受信料徴収の根拠となっているのは何か。それは2017年12月6日に最高裁が下した初判断である。
放送法の規定が「契約の自由」などを保障する憲法に反するかが争われた裁判で、最高裁大法廷が放送法64条を合憲とする判決を言い渡した。64条では、テレビを設置した人に「家にテレビがある者は受信契約を結ばなければならない」とNHKとの契約を義務付けている。
判決は受信料制度の合理性について、「(受信料制度は)憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足すべく採用された」と認め、受信契約を義務付けた放送法の規定に対しては「公平な受信料徴収のために必要である」と肯定した。
放送事業の運営財源を視聴者からの受信料に求めるのは、表現の自由を判断した結果だ。国や特定の団体から影響を受けるようでは、公共放送とは言えない。公共放送は国民の公平な負担に支えられてこそ成り立つものだろう。
しかし、NHKがこの最高裁判決をお墨付きにして受信料徴収を進めているとしたら、公共放送としての立場を自覚していないことになる。そこが一番問題なのである。
7000億円を突破して増え続ける受信料収入
1年半前の最高裁判断が受信料支払いの義務を原則的に認めたことで、NHKは受信料の徴収を強化している。
その証拠に、徴収業務の裏側ではNHKから業務委託を受けた業者が「受信料の支払いは国民の義務で、支払わないと法律違反になる」と脅すように受信料契約を結ばせるケースがあり、トラブルも報じられている。
NHKは5月14日に2018年度決算(速報値)を発表したが、受信料収入は7122億円(前年度比209億円増)で、初めて7000億円台に達した。受信料収入が過去最高となった背景には、最高裁判決の強い影響があるのだろう。
ただし、最高裁は「一方的に支払いを迫るのではなく、理解を求めて合意を得ることが大切だ」とNHKにくぎも刺している。さらに「知る権利に応えるようNHKに求める権利が視聴者にはある」とも指摘している。
NHKは最高裁判断をお墨付きにするのではなく、判決の真意を理解するべきである。