【牧之段】あと、浅見さんの出した現金派の特徴である「③お金の使い方が慎重」は、裏返すと使いすぎを防ぐために現金で管理したいということでもありますね。学生だと収入が少ないですから、現金の減りを日々目視することで自己管理しています。

【原田】キャッシュレスにした方がデータで明確に残るので、本当は現金よりもちゃんとお金の管理ができるはずなんだけど、残金を現物で見て確認した方が安心、ということなんだろうね。日本はいまだに現金信仰の強い保守的な若者が多いんだろうね。

【千葉】私がインタビューした若手社会人たちは、私の周りにいる学生たちと違って、全員がキャッシュレス派でした。だから、社会人になって、比較的お金に余裕ができるとキャッシュレス派になる人が多いのでは。

お金に余裕のない学生でキャッシュレス決済をよく使っている人は、大人と関わることが多い人です。社会人の先輩とかがQRコード決済しているシーンに居合わせて、「これなんですか?」「便利だよ」みたいに説明を聞いて使いはじめるんですよ。

【原田】クレカを作れない高校生や大学生を狙うか、お金に少し余裕のできる若手社会人を狙うか、キャッシュレス決済サービス業者は、ターゲットとタイミングとインサイトをしっかりと見定めないといけませんね。

皆の意見を総合すると、キャッシュレス派の若手社会人には総じて「できる人」という良いイメージがあるようだから、「できる社会人の身だしなみ」みたいな訴求の仕方は若手社会人には効くかもしれないね。

割り勘はキャッシュレス決済向き?

【原田】ここらでキャッシュレス決済向きのシチュエーションと現金決済向きのシチュエーションを整理してみたいと思います。みんなの意見として一致していたのは、小銭のやりとりが煩わしいコンビニではキャッシュレス決済が向いている、ということだったよね。

【浅見】列が長い時に早く会計が済みますし、店員さんの立場からしても釣り銭ミスが減るのは良いことだと思います。

【原田】多人数で食事をしたあとの割り勘はどうかな? 「LINE Pay」は割り勘機能を売りにしているらしいけど。

【赤峰】全員が「LINE Pay」を使っていなければ割り勘ができませんし、今はファミレスなどでも個別会計のできる店がほとんどなので特に必要性を感じていません。

【原田】そうか、アメリカでは「Venmo(ヴェンモ)」という個人間送金アプリで割り勘をするのが若者の間で定着しているのだけど、そもそも割り勘が昔から根付いており、個別会計してくれる店が多い日本では、少なくともアメリカに比べると必要性自体が少ないんだね。