すべては自分の弱さを認めることから始まる

「動じない心」をつくるには、「私の心はガラスのようにもろい」「メンタルはみんな弱いものだ」という現実をしっかりと認識することが重要です。そして、これこそが本能と共に生きることであると考えています。

「俺はメンタルが強い」と気丈に振る舞う人もいますが、それはただ、弱い心にフタをしているだけと言えるでしょう。そうではなく、1度フタを外して「自分はすごく弱い」「ダメな人間だ」「自分はだらしない」と観念して、認めてあげることが大切です。

「自分は弱い」というのが本能レベルで理解できて、初めて動揺しないための準備や対処が可能になるのです。

たとえば、僕の場合は、緊張してウォーミングアップを早めにやってしまう癖があり、試合前に身体が冷えてあれこれ考えすぎる傾向がありました。そのため、改善策として「緊張しやすい自分の性格」をきちんと受け止めて、どんなに緊張していようがウォーミングアップは試合直前にやるというルールを設けました。すると、以前より集中した状態でスパッと試合に入ることができたのです。

日常の例で言えば、「女性にだらしない」とわかっていれば、そういう状況にならないようにすればいい。夜のお姉ちゃんがいるようなお店などに行かなければいいのです。「ギャンブルをしてしまう」のであれば、雀荘や競馬場に近づかなければいい。

つまり、「自分は弱い」という事実を観念して認めたうえで、そういう状況を避けるのがいちばん賢い対処法です。

「不安は妄想」として「質よく量をこなす」

自分の弱さに観念してきちんと向き合っておくと、「恐怖」にも冷静に対処できるようになります。恥ずかしい話ですが、僕はいまだに試合をすることが怖いのです。

でも、だからこそ「この怖さはどこから来るものなのか?」を毎試合きちんと冷静に分析しています。負けることが怖いのか、ケガをすることが怖いのか、周囲にジャッジされることが怖いのか……。そこをきちんと自分のなかで熟考していきます。

そして、その恐怖たちに対して、一つひとつ落としどころを見つけていくのです。

たとえば「ケガが怖い」であれば、「車にひかれてケガをする可能性は日常生活にだってあるし、起きてもいないケガのことを心配しても仕方がない。この不安は妄想だ」と理解して、気持ちを落ち着かせます。そうなれば冷静に挑戦することができます。

あとは「場数」です。僕は、総合格闘技の試合だけで50戦を超えています。国内でも、それだけの試合数をこなしている人は少ないでしょう。多くの場数を踏んでいるという事実が自信にもなります。

そのために、まずは「質より量」を意識することも大事です。