ようやく若年層への支援が動き出した

――AYA世代(Adolescent and Young Adult/思春期・若年成人)への支援は多岐にわたることと思います。患者になると接することの多い「がん相談員」(※)の方も得意な分野や知識に偏りがあり、まだまだAYAがんに詳しい方が少ないように感じました。

※全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」のスタッフ。がん専門相談員としての研修を受け、がんの治療や療養生活についての質問に対応している

ひとつわれわれの大きな成果として昨年7月、がん診療連携拠点病院の指定要件に「AYA世代の対策」という文言が入りました。これによって、がん診療連携拠点病院を厚労省に推薦する立場である都道府県の自治体が今、AYAがん対策をはじめています。

どうやって生殖医療医とがん治療医の連携をはかるのか、就労・進学の支援をどうするのか、今ようやく動き出したところですので、がん相談員の方の体制を含め、環境が整うまでにはもう少し時間がかかるかもしれません。

経済格差、地域格差、施設内格差という課題

妊孕性温存にはお金がかかります。男性の精子冷凍保存なら多くは数万円、女性の場合は、数十万円の費用がかかるので、経済的問題で妊孕性温存ができない患者さんもいます。こういった経済格差の問題に加え、大都市に比べるとどうしても地方はまだ教育体制が十分でない病院も多く、妊孕性温存に関するAYAがん対策には地域格差の問題もあります。

そして消化器や脳神経外科、整形外科といった若年患者の少ない科や腫瘍医の少ない診療科では、妊孕性温存についての情報がどうしても後回しにされがちで、施設内でも格差が出てしまう。まだまだ課題はたくさんあるんです。

とはいえ患者さん側も、「先生が妊孕性温存の話をしてくれなかったから知らない」「治療は医者にお任せでわからない」ではなく、自ら正しい知識・情報を得ることも必要です。国民全体が妊孕性のことなどを正しく理解することが、AYA世代のフォローには重要でしょう。