震災に伴う計画停電が続いているが、停電により仕事ができない場合、労働者は給料を請求できるのだろうか。労働条件や労災に精通するウェール法律事務所の小川英郎弁護士によると、「会社側の『責に帰すべき事由』(民法536条)で休ませる場合、原則として100%の賃金支払いをしなければなりません。これは、会社の都合や事情によって労働者を休ませるような場合をいいます。天災などの不可抗力は会社の都合とはいえませんので、この場合は賃金を支払わなくてよいということになります。同様に、労働基準法の26条(休業手当)では(会社側の責めに帰すべき事由による休業の場合は)最低60%支払わなければならないと記されています。この60%というのは罰則をもって使用者に支払いを義務付ける最低限の支払い額であり、事情によっては、さらに民法536条によって、40%分の支払いを免れないこともあります。災害によって直接被害を受けてしまった場合のように、支払い義務がない場合もあります」
100%、60%以上、0%と3つの考え方があると考えればいいようだ。では、計画停電による休業はどれに当たるのか。
「まず会社の就業規則や労働契約、労働協約を見てください。そこで、休業時の賃金支払いについての特別な規定があれば、それによりますので、仮に天災などで休業するときであっても賃金を支払うと明記されていれば全額支払いを請求することができます」(同)
そこまで明記してある会社は少ないはず。となると、先ほどの労働基準法26条が絡んでくるものの、厚生労働省は計画停電を「会社側の責めに帰すべき事由」に当たらないとし、その分の賃金を支払う必要はないという通達を出している。
しかし、計画停電は就業時間の一部にかかるケースがほとんどだ。8時間のうち3時間が停電となった場合、時間帯によってはこれでは仕事にならないというケースも出てくる。すると残りの5時間分は停電による影響ではないため、たとえ丸1日休みとなっても労働者に5時間分の賃金を請求する権利はあると考えていいようだ。言い換えれば、就業時間がすべて計画停電にはいっているなら賃金を請求することはできないわけだ。
「計画停電のため、休業を命じられたものの、パソコンを使えばできるような業務を自宅でせざるをえない場合もあります。自発的に自宅で業務をするといった場合は、賃金支払いの対象とはならないと思いますが、上司に命じられて計画停電時間中も含め、自宅での業務をしたという場合は、その時間は労働時間となりますので、会社は賃金を支払わなければなりません。そもそも、この場合はその労働者については、『休業させた』とはいえないでしょう。このような場合は、業務として命じられているのかどうかを事前によく確認する必要があります」(同)
同様に、平日休みにしたので休日出勤を求められた場合は、就業規則に休日割り増し手当があるなら割り増しで賃金を請求することができる。
一方、労働者が計画停電の影響で電車が止まるなどして欠勤、もしくは遅刻するときは、賃金を減らされるのは仕方ない。しかし、このようなやむをえない事情であるにもかかわらず、それを理由に無断欠勤扱いで解雇などのペナルティを科すことはできないという。
ちなみに派遣労働者になると少々話が違ってくる。というのも「派遣労働者は、派遣元に雇用されています。派遣先の会社が震災の影響で休業したとしても、派遣元は他の派遣先を探すなどの努力を求められるので、一方的に『派遣切り』をしたり、解雇したり、無給で自宅待機にすることは原則的にできません」(同)。