活況というミドルの転職。実際に経験した者はどんな感想を抱いたのか――。さまざまなキャリアの3名(仮名)が、その現実を明かす。

青野さん(仮名)
男性38歳。システム開発。国内メーカーから競合他社へ転職。転職歴2年。現在4社目。
白井さん(仮名)
女性40歳。広報。ベンチャーから大手メーカーへ転職。転職歴半年。現在6社目。
黒田さん(仮名)
男性43歳。営業。外資系ITから国内サービスへ転職。転職歴3年。現在3社目。

【青野】なぜ転職を?

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【黒田】カッコよく言うと、前職で燃え尽きたんですよ。かなり大きな契約をとって、もうこれ以上の成果をあげることはないかなという達成感があって……。それで転職先を探してたら、競合他社に今よりいい条件を示されたんです。でも同じ仕事の繰り返しになるのがつまらなかった。もともといた会社でできないことや、さらに上のレベルの事業に挑戦したい、と考えて、違う業界の会社を選びました。

【青野】僕は燃え尽きる前に、飛び出しましたねえ。前にいたのは歴史のある企業で、旧態依然とした社風に耐えられなかったんです。もっと若くて勢いのある会社で働きたくなって、同じ業界の新進気鋭企業にピンポイントで転職しました。業界トップでもあるので、正直、見返してやった感はあります。

【白井】わかります! 私も見返したい気持ちがありました。夫に。

【青野】夫に?

【白井】10年前に「俺の給料を超えたら主夫をやってあげるよ」って言われて、ものすごく腹が立ったんです。それで「いつかあなたの給料を超えてやる!」と思って、今でもそれがモチベーションになっている。

【青野・黒田】……(しばらく沈黙)

【黒田】白井さん、今が6社目なんですよね。転職回数が多いのは年収にこだわりがあるから?

【白井】それもありますけど、子育てと両立できる企業を求めてきたのが大きいです。だから今の会社は「週4回は定時帰宅」という条件を一番にして探しました。黒田さんは共働きですか?

【黒田】ですね。子どももいるのでそれなりの収入は確保しないといけないんですけど、妻が稼いでいることもあって、転職は歓迎でした。うだつが上がらない男より、意欲的に働いている夫のほうがいいんじゃないんですか。

【青野】妻の反応は転職を左右しますよね。僕は「そんなダメな会社早く辞めたら?」っていう妻の一言で「よし、辞めるか!」って決断できました。

【黒田】何度か転職していると、家族も次第に慣れてくる。逆に1回も転職してない知人を見てると、「会社にしがみついてるな~」「60歳まで逃げ切れるのか?」って心配になっちゃう。

【青野】20代のときと違って、30歳を超えると腹がすわってきますよね。どんな仕事に就いても、70点は取れるという自信がある。

【白井】ただ若いときと比べると、辞めるのが大変。前職はわりに長くいて、会社愛をアピールしていたから、「なんで辞めるんだ?」という役員に納得してもらうのが大変でした。

【青野】僕も前の職場で辞表を受け取ってくれなくて、苦労した経験あります。最後、社長が車に乗り込むタイミングで飛び出して、手渡しましたけど。