温泉はリラックスであって「チル」じゃない

【原田】インスタ映え以外に、旅行の目的は?

【小野里】「チル(※)」、かな。海岸にパラソルを立てて、その下で1時間とか2時間とかすごすんです。手元には瓶がおしゃれな海外のビール、奥に海が広がっているので、写真映えもします。

※編集部注:英語の「Chill out」が語源の若者言葉。「まったりする」「くつろぐ」といった意味合いで、「これからカフェでチルってくる」「さっきまでネフリ(ネットフリックス)でチルってた」などと使用する。

「若者と旅」座談会に参加した大学生たち。(撮影=プレジデントオンライン編集部)

【浅見】私、海の家も行きますよ。

【原田】江ノ島とか?

【小野里】私、江ノ島は汚いから行きません。行くなら海外とか沖縄のきれいな海ですね。

【原田】若者の海離れは以前からよく言われていたけど、ここ数年でかなり回復してるみたいだね。海岸の治安が悪くなりすぎたのを、地元の努力で戻した結果。あまり大音量で音楽をかけさせないとか、ゴミを厳しく取り締まるとか。でも、まだ江ノ島はマイルドヤンキーが騒ぐイメージが残ってるのかな。

【小野里】海に行くと女子は水着が面倒ですからね。男子は海から上がってそのまま海パンをはいていられるけど、女子はいちいち着替えが面倒。水着は宿で洗っておかなきゃいけないとか、手間がかかります。

【原田】温泉もチル?

【牧之段】いえ。僕の場合、温泉はリラックスであって、チルじゃないです。チルはもう少し、他の人に見てもらうことを前提とした陶酔感込みのライフスタイル。「自分の暮らしに余裕がある」感じを人に見せつけるというか。たとえば、シーシャ(水タバコ)を吸っているのをインスタのストーリー(動画)に投稿するのはチル。海外のビールを海外のポテチと一緒に写真に撮ってインスタに上げるのも、けっこう陶酔感があるので、チル。それがふつうのビールだと、チルじゃない(笑)。

シーシャ(水たばこ)を提供するカフェの様子。(画像提供=Book _ Shisha いわしくらぶ東京店

旅行の目的における「映え」と「チル」の割合

【原田】たしかにシーシャもカッコいい瓶もインスタ上でよく見るね。しかし、日本の缶ビールはインスタ映えしないからインスタにあまり載せないけど、海外のクラフトビールは載せるってシュールだなぁ。

【牧之段】ただ、インスタ映えとチルは若干違うんですよ。

【浅見】そうですね。「映え」だと「いいね!」の数が増えるけど、チルの場合はただビールを写してるだけなので「いいね!」はあまり押されません。「映え」は積極的なアピールだけど、チルは牧之段くんも言っているようにライフスタイルのアピールなので。

【牧之段】インスタ映えは普通の投稿に多くて、チルはインスタのストーリーに多いですね。

【原田】なるほど。映えは「いいね!」をもらう目的の普通の投稿。チルはストーリーなんだ。これならおじさんも覚えやすい。

【高貫】ちょっといいホテルに泊まった時、部屋とかバブルバスをストーリーで投稿するのはチルです。

【牧之段】とはいえ、旅行の目的における「映え」と「チル」の割合は、やっぱり「映え」のほうが大きいでしょうね。

【原田】映え7割、チル3割くらいの過ごし方ができる旅先が、国内外問わず、若者に支持されていくようになっていきそうだね。