トランプ大統領「自分を弾劾すれば株価は暴落する」

11月6日、米国では中間選挙が実施される。大統領選挙と異なり中間選挙は有権者の投票によって議員が選出される。そのため、中間選挙はその時の大統領の通信簿としての意味合いが強い。大統領再選を目指すトランプ大統領としては、何とか自らの成果を誇示して有権者の支持を獲得しておきたいところだ。それが、米中貿易戦争やイラン制裁再開などにつながっている。

中間選挙では下院の435議席すべてが改選される。一方、上院は35議席が改選対象だ。下馬評では、ロシアゲート疑惑などを理由に下院で民主党が過半数の議席を確保するとの予想が多い。

本当にそうなれば、トランプ政権の政策運営は停滞するだろう。近い将来、下院の過半数の賛成を得て大統領の弾劾訴追案が可決される可能性も否定できない。8月にはトランプ大統領自ら「自分を弾劾すれば株価は暴落する」と述べた。これは、トランプ氏が中間選挙の結果にかなりの危機感を持っていることを示した発言だ。

そう考えると、中間選挙はトランプ大統領の経済政策に無視できない影響を与える。民主党が下院の過半数を獲得すれば財政の悪化につながる経済刺激策を進めることは難しくなるはずだ。そのほか、移民政策など経済以外の政策分野でもトランプ政権への反対が増えるだろう。

中間選挙後の政策がどのように運営されるか、市場参加者は慎重にならざるを得ない。その見方が、今回の米国の株価急落と、それに続く各国の株式市場の下落につながった直接の要因と考える。

大手投機筋の「プログラム取引」の影響か

中間選挙への懸念が高まる中、投資家は株価が上昇してきた米国のIT先端企業を中心に株式を売却した。10日、IT銘柄の多いナスダック総合指数がS&P500指数などよりも大きく下落したことはIT銘柄への売り注文が多かったことをよく示している。それに加えて重要なのが、人工知能などを用いたプログラム取引の影響だ。

大手機関投資家を中心に、より高いリターンを獲得するためにビッグデータを分析し、マイクロ秒(100万分の1秒)レベルでの高頻度取引を行うことなどが重視されている。データ分析の手法は統計学の理論を応用したものだ。各社の投資手法には共通点が多い。特徴としては、株価上昇の確率が高いと考えられる銘柄に買いが集まりやすい。その典型が米国のIT先端企業だった。

在ニューヨークのファンドマネージャーにヒアリングしたところ、10日の株式市場では、一部投資家の売りを受けて、プログラム取引を用いたファンドから米国のIT先端銘柄への売り注文が殺到したそうだ。その結果、売るから下がる、下がるから売るという連鎖反応が発生し大幅に株価が下落した。各社が似通った高頻度取引のプログラムを導入したことが、ナスダック総合指数を中心とする株価の下落を増幅させたということだ。