医療費がたくさんかかった年は確定申告でお金を取り戻すことも可能です。原則的に1年間に支払った家族みんなの医療費が10万円を超えると「医療費控除」の申告ができて、所得税の還付を受けられる可能性があります。2017年分の申告から薬局で購入した市販薬(スイッチOTC)が1万2000円を超えると税制優遇を受けられる「セルフメディケーション税制」も始まりました。ただし、利用できるのはどちらか一方なので、支払った医療費によって有利なほうを選びましょう。
手続きを忘れていた場合も、高額療養費も医療費控除も過去に遡って申請可能です。ただし、いずれも時効があり、前者は2年、後者は5年。申告時に慌てないで済むように、医療費関係の領収書はまとめて保管しておくことをお勧めします。
退職日に働くと、給付打ち切りに
治療後、すぐに社会復帰できればいいけれど、なかには療養が長引いて休職せざるをえないケースもあります。そうなると「収入がなくなるのでは?」と不安になりますが、会社員が病気やケガで仕事を休んで勤務先から給料をもらえなかったり、減額されたりした場合は、療養中の所得補償として健康保険から「傷病手当金」がもらえます。給付要件は「労務不能」の状態なので、病院に入院していればもちろんのこと自宅療養も対象です。
1日あたりの給付額は、休職前12カ月間の平均日給の3分の2。会社から給料が支払われていても、この金額に満たない場合は差額がもらえます。給付期間は、病気やケガで連続して3日休んだあとの4日目から最長1年6カ月の間に実際に休業した日数です。1年6カ月分まるまるもらえるわけではないので、その点はご注意を。ただし、「以前、心筋梗塞で休業して傷病手当金をもらったが、今度はがんになって休職した」というように因果関係のない病気になると、それぞれ最長1年6カ月ずつ傷病手当金をもらえることは覚えておきましょう。
もうひとつ注意したいのが、傷病手当金の受給期間中に退職することになった場合です。本来ならあってはならないことですが、休業が長くなってくると、「治療に専念しては?」と体のよい肩叩きに遭うことがあるようです。
そうした退職勧奨に応じる義務はありませんが、病状によっては仕事を続けるのが難しいこともあります。そのとき、受給期間が残っていれば、仕事を辞めて勤務先の健康保険の資格を喪失しても引き続き傷病手当金の給付は受けられます。ただし、受給要件は「連続して3日休んだあとの4日目から」なので、退職日(健康保険の資格喪失日)に会社に挨拶しに行って出勤扱いになると給付が打ち切られてしまいます。挨拶は資格喪失日の3日前までに済ませておくのが鉄則です。