代引き払い機能の導入に関しては、アイデアの着想からサイト上での運用開始までに要した時間は、5カ月ほどです。検討・決定しなければならなかった要素の数を振り返ると、われながら驚くほどのスピード感です。そしてなにより重要なのは、関わってくれた仲間全員が、このスピード感で仕事を進めてくれたことです。

これほどのスピードで進めることに対して、なぜ全員が恐れや抵抗感なく行えるのでしょうか。それは、アマゾンが掲げる「リーダーシップ理念」に秘密があります。アマゾンには14カ条からなるリーダーシップ理念「OLP(Our Leadership Principles)」があります。OLPは部下を持つリーダーだけでなく、全社員が対象です。

OLPの第9条に「Bias for Action(とにかく行動する)」という一文があります。「行動する? 行動しない?」で迷うのではなく、「行動あるのみ!」と言っているわけです。そして補足の解説文できちんと「やり直すこともできる」と述べています。そして、「計算されたリスクをとることも大切」と背中を押しているのです。このような行動理念があるからこそ、アマゾンの社員たちは安心して行動を開始し、かつ行動し続けられるのです。

複数の糸口をイメージして行動する

また、新しいサービスやプロジェクトの検証を重ねるうえで重要なのは「柔軟な発想」です。問題や課題にぶつかったとき、より多くの解決策を導き出し、そのなかから最善を選択する必要があります。

わかりやすく説明するために、ここでクイズです。「あなたが知っている市区町村の、トイレの便器の総数は、だいたいどのくらいだと思いますか?」

このクイズを聞いたほとんどの人は、「人口」をベースに算出します。ではさらに続けて、「では、人口以外の数字をもとにトイレの便器の総数を算出してもらえますか?」と聞かれたらどうでしょうか? このときに浮かぶ切り口がどれだけあるかが、自分の頭の柔軟性が問われるのです。もっとも簡単なのは、「トイレを頭に思い浮かべたときに出てくるもの」を切り口にする方法です。

例えば、トイレットペーパーの消費量。年間ないし月間どれくらい使われているかがわかれば、その数字をもとに便器の総数を算出できるかもしれません。あるいは、トイレで使われている水の量がわかれば、その数字も使えるかもしれません。