故郷へ戻ることに、もはやマイナスイメージはない!
住む場所も仕事も替え、美しい自然のなかで人生の後半を過ごす。年を重ねると、新しいスタートを夢見るものだ。近頃、そんな自由な生き方が比較的簡単にできるようになりつつある。
「この10年間で、地方移住の相談は右肩上がりで増えています」と語るのは、ふるさと回帰支援センターの高橋公理事長。同センターに相談を寄せた人数は、2008年は約2500人だったのが、17年には3万3000人を超え、大幅に増えている。
高橋氏によれば、潮目が変わったのは14年。政府が地方活性化を目的とした「まち・ひと・しごと創生本部」をつくり、地方創生推進交付金を出すようになった。この交付金をもとに、各自治体は、住居の斡旋、第2子以降の保育園の無料化、介護施設の充実など、移住者への優遇政策を打ち出し、積極的にわが町への移住を呼びかけるようになった。
「10年くらい前までは、東京から地方に戻ってくると、『都会で一旗揚げるつもりが、尻尾を巻いて逃げ帰ってきた』と見られるようなマイナスのイメージもありました。しかし最近は若い層を中心に、首都圏から地方に移住するのは特別なことではなくなっています」(高橋氏)
また、14年には内閣府の主導で「プロフェッショナル人材戦略拠点事業」が始まった。都会からは見えにくい地方の中小企業の求人情報を可視化し、首都圏在住者や人材会社につなげるための組織だ。転職サイトを運営するビズリーチの地域活性推進事業部・加瀬澤良年チーフプロデューサーは、「この事業が始まったことで、明らかに人材の流動性が高まりました。成功例も生まれて、よいスパイラルが回り始めたといっていいでしょう」と説明する。
「数年前まで、Iターン・Uターン転職の主役として期待されていたのは若者でした。多くの地方企業では採用するとき、中途ではなく新卒を採用する文化があったからです。しかし30代以上のIターン・Uターンの事例が蓄積するにつれ、企業側もそれぞれの年代に応じた人材の活用法を把握してきました。シニア層をターゲットとした求人は多くはありませんが、経験を重視する求人は増えています」
一般的に求められるシニア層は、大企業出身者が多い。地方の中小企業では、大手で培った知見やノウハウをほしがっており、なかでも製造業の品質管理や工場管理など、元管理部門職の採用が目立つという。また大企業には転勤する機会が多く、家族も移住に慣れているため、反対が少ないという事情もある。
1位:長野県 2位:山梨県 3位:静岡県 4位:広島県 5位:新潟県
6位:福岡県 7位:岡山県 8位:福島県 9位:宮崎県 10位:富山県
出典:ふるさと回帰支援センター(東京)「移住希望地域ランキング」(2017年)