違う業界で働くのは当たり前な世界がやってくる
一方で人手不足と騒がれながら、世間的に一流企業と呼ばれる銀行、百貨店、家電メーカーなどは大規模な人員削減を進めている。どんなに仕事に慣れ親しみ誇りを持っていたとしても、時代とともに衰退する産業、IT・ロボット化で雇用縮小する業界から人は離れ、職を求めて動かざるをえない。
「違う業界で働くのは抵抗があるでしょうが、それが当たり前な世界がやってきます。求められるのはプロフェッショナリズム、業界を問わずに活かせるスキルを身につけることです。ロイヤルティを大切に1つの企業や業界に長くいるのではなく、いろいろな業界を回ってスキルを磨く姿勢が必要です」
専門スキルというと資格が必要な技術職のようにも聞こえるが、そうではない。接客や営業、クレーム処理の担当、プロジェクトをまとめるリーダー……と業界を超えて活かせるスキルはたくさんある。雇用する側もむしろ異業種経験のある人に、業界の常識を打破する新しい風を求めている。
「日本は古い慣習で辞めた人を再雇用するのを嫌がる傾向がありますが、そんなことを続けていたら潰れます。チャレンジする人や企業・組織だけが生き残る。20年の五輪以降、その傾向ははっきり出てきます」
非正社員の賃金は、上がるけれど……
人手不足になれば、労働者を確保するために企業は賃金を上げるというのが常識だったが、そうはなっていないのが現状だ。
「賃金体系は正社員と非正社員に分かれます。00年以降、企業は非正社員を増やして賃金を抑えてきましたが、人手不足で、もうそれはできない。非正規雇用は需給関係で成り立つ世界なので賃金は上がりやすく、時給だけ見れば、賃金はここ何年も2%を超えて上昇しています。差が小さくなれば、子育てや介護で離職しなくても、正社員になったり、非正社員になったりフレキシブルな対応ができます」(図4)