アマスポーツの「次の火薬庫」は高校球界ではないか

聞くところによると甲子園のマウンドの温度は60度くらいになり、選手が感じる体感温度でも45度くらいだといわれる。

100回の記念大会ということもあってだろう、酷暑問題を無視して甲子園を強行した朝日新聞の大会関係者たちは、何事もなく終わってくれと、毎日祈っているのではないだろうか。

だが、選手の酷使以外にも、高校球界には根深い構造的な問題が多くある。レスリング、アメフト、ボクシングと続いてきたアマチュアスポーツ界の不祥事だが、私は次の火薬庫は高校球界ではないかと考えている。

以前からいわれているのは暴力と飲酒、喫煙などの問題である。今春の関東大会で優勝した強豪校・健康福祉大高崎(群馬)で5月中旬に部内暴力が起きたため、対外試合を自粛したと日刊ゲンダイ(6月24日付)が伝えている。

4月には東海大甲府(山梨)で4人の部員が「加熱式たばこ」で喫煙したことが発覚している。

昔からよくあるのが、投手に対して監督やコーチが「相手の頭にぶつけてこい」と激を飛ばすケースだ。日大アメフト部のような大きな問題になったことは、私が知る限りないようだが、相手のバッターに危険球を投げろと強制されたという内部告発でも出てくれば、大きな問題になるだろう。

1人あたり月3万円の指導料で50人以上の子供を預かる

金の卵を巡るカネの疑惑もしばしばささやかれる。プロ野球球団が目を付けた選手を自分の球団に入れるために、監督などへ多額のカネを払うというケースはよく知られている。

息子を甲子園に出られる有力高校に入れるために、親が禁じられている野球ブローカーに斡旋入学を頼むことも横行しているようだ。

『週刊ポスト』(2016年8月12日号)によれば、

「強豪校がカネを出してまで欲しがる選手は一握り。その一方で我が子の甲子園出場の夢を叶えさせてやるために、カネに糸目をつけない親たちがいる。近年盛んなのは、強豪校とパイプを持つ少年野球指導者の元に子供を預けることだ。

少年野球の世界では『私は名門高校の野球部に◯人入部させた』をウリ文句に選手を集める指導者は少なくない。1人あたり月3万円の指導料で50人以上の子供を教え、首都圏に200平米の豪邸を建てた指導者もいる」

甲子園で決勝戦までいけば6試合で6000万円かかる

わが子を名門高校に入学させるために一家で高校の近くに移住してくるケースもある。しかし運よく野球部に入れたとしても、相当な負担が親にかかってくる。

「スポーツジャーナリストの手束仁氏は、首都圏と東海地区の高校を中心に野球部の金銭事情に関するアンケートを実施。回答のあった185校の平均を算出したところ、部員1人あたりにかかる1年間の親の負担額は、『部費・2万8925円』、『父母会費・2万7811円』、『用具代・4万6235円』など計23万2082円だった。寮のある高校では、寮費や食費としてさらに5万円ほどが加わる。

『これは強豪校と一般校を区別せずに集計した平均です。強豪校であれば遠征の回数も多いので、年間の平均額は30万円ほどになる』(手束氏)」

カネを出せば口も出すのが世の習い。ベンチ入りできなかった部員の親がイジメや喫煙など、チームの不祥事をマスコミにリークするケースも珍しくない。リーク先は朝日新聞とライバル関係にある読売新聞が多いそうである。

運よく甲子園へ行けたとしても、監督や選手を含めた20人には旅費や宿泊代が朝日新聞から出るが、学校を上げて応援に行くのは全て自腹である。だいたい1試合1000万円はかかるといわれる。決勝戦までいけば6試合だから6000万円。寄付を募るが、それほど集まらない学校も多いそうだ。

青春の象徴のようにいわれている高校野球が泥にまみれる日が来るのは、そう遠いことではないかもしれない。