「赤坂自民亭」で総裁選運動は自粛モードに

状況が変わったのが7月5日。赤坂の衆院議員宿舎で行われた宴席「赤坂自民亭」に安倍氏も出席した。自民亭への出席も、安倍氏にとっては選挙活動の一環で、実際若手議員と写真を撮りながら「呼んでくれればどこへでも行く」と声をかけていた。

この時既に西日本豪雨の深刻な被害が予測される状況だったため、危機管理対応のまずさを批判された。このあたりの事情は既報の「大炎上『赤坂自民亭』は何が問題だったか」で詳しく解説しているので参照されたい。その結果、安倍氏は総裁選に向けた対応を極力控え、災害対応に専念する姿勢を見せてきた。

安倍晋三首相らが7月5日夜に参加した懇親会「赤坂自民亭」の集合写真。西村康稔官房副長官のツイッターより

日本テレビと共同通信が報じた「ステルス戦術」の中身

「ステルス戦術」が明らかになるのは7月下旬のことだ。日本テレビと共同通信が続けざまに注目すべきニュースを発信した。

日テレの報道は24日昼、自民党無派閥議員が首相公邸に集まり安倍首相とランチ会合を持ったというもの。共同通信は25日夜、同じく公邸で山口県議ら約30人と安倍首相が懇談したと報じた。報じられた2つの会合は、首相官邸側が公表していない。会合そのものが明らかになるのを避けようとする「ステルス戦術」をとったのだ。

首相の動静はいつもメディアにチェックされていている。面会した人物は事務方が非公式に記者側に伝えることになっている。新聞各紙の政治面には「首相の1日」が掲載されている。しかし24、25日の会合は、出席者は裏口から出入りし、事務方も会合の事実を伝えなかったため、マスコミの網をくぐり抜け、新聞には掲載されなかった。2つの会合は報道で表に出たが、まだ明らかになっていない会合があるかもしれない。

首相側が会合の事実をふせた理由は、聞かなくてもわかる。災害対応に集中していることになっている手前、首相公邸で多数派工作を行っていることは知られたくなかったのだろう。「自民亭」は、安倍氏らがのんきに乾杯する姿がSNSで拡散されて批判を受けた。その反省で会談を控えるのではなく「ばれないように内緒で会合する」ことにしたのなら、本末転倒も甚だしい。