政権の隠蔽体質をあらためてさらけ出した

新聞の「首相の1日」は、必ずしも真実が書かれていないということは、これまでも指摘されてきた。官邸や公邸の出入り口には「見張り」の記者がいるが、別の通用口を通れば分からない。いったん建物内に入ってしまえば、首相に会ったかどうか分からない。

また、官邸や公邸に入ったのが確認されても、事務方が「官房長官と会っただけだ」と説明すれば、反証するのは難しい。ホテルなどで「秘書官と食事」などと広報しておきながら、実は重要人物と会っていた、というようなこともある。

会合を秘密にするのは、会った相手に迷惑がかかるのを避けるため、という場合が多い。政治的に中立な有識者、野党関係者らと会う時などだ。政府・与党の幹部との会合でも、衆院解散の決定など重大事案を相談する時は、極秘にすることがある。

今回は事情が違う。自民党の国会議員や地方議員なら伏せる必要は全くない。安倍政権は「森友」「加計」問題などのスキャンダルや官僚の不祥事に対して説明責任を果たしていないという批判を受け続けている。今回の「ステルス戦術」も、政権の隠蔽体質をあらためてさらけ出した。

出席者がたくさんいて送迎の車の出入りも激しかったのにそれを見落としたメディアの方にも相当問題はあるのだが……。

参加者の一部には「極秘会合に参加した」と高揚感

2つの秘密会合は、予想外の効果も生んだようだ。出席者には「会合のことは口外しないように」との箝口令が敷かれたという。そのことによって出席者の中には「公邸で行われた極秘な重要会合に自分は参加した」という妙な高揚感が漂っている。

恐らく出席者の多くは総裁選で安倍氏を支援することになるだろう。だとすれば「ステルス戦術」は安倍3選に向けて好影響を及ぼしたということになる。計算ずくだったとしたら、安倍氏の人心掌握術は相当なもの。権力を維持しようというしたたかさでは、石破氏らには足元にも及ばないということか。

(写真=時事通信フォト)
【関連記事】
橋下徹"赤坂自民亭に怒る人は論理力なし"
日本を私物化して開き直る安倍夫妻の異常
"安倍3選のカギ"進次郎氏が自粛する背景
世界に例がない"史上最悪"の選挙制度改革
安倍1強になびく"ゾンビ議員"たちの最期