アッパークラスは「美術を踏み絵として使っている」

もともと“貴族のたしなみ”だった美術の教養は、身分制が崩壊した欧米においてもなお、「自分の階層(ステータス)を対外的に主張する手段となっている」という。

「英国の中流家庭出身のキャサリン妃がウィリアム王子と出会ったのは大学の美術史講座でのことです。これは偶然ではありません。欧米にはエリートの教養として美術史など人文学的教養が高く位置づけられているのです」(同)

結果として、グローバルビジネスをリードするアッパークラスは「美術を踏み絵として使っている」と木村氏は語る。

「自分たちと同等の知性と教養がなければビジネスの取引先としてはよくても、真のパートナーにはしたくない」

そう面と向かって言わずとも、歴史的絵画について話せば一発で見抜けるというわけだ。先の会社役員ではないが、なるほど、この「踏み絵」で躓く日本人は多そうだ。

「フランス人と話すときは、ニコラ・プッサンが好きだと言えばいい。画集をカバンからのぞかせるだけで、相手の対応がガラッと変わります」

飛行機の中で読んでも遅くはない。本書は極めてシンプルに必須の美術史的教養を与えてくれる。

木村泰司
西洋美術史家。高校卒業後、カリフォルニア大学バークレー校にて美術史を学ぶ。年間100回ほどの美術講座、セミナーを実施。
(撮影=岡本 凛)
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