ダイバーシティ推進で業績や離職率に成果が

また、同社は「ダイバーシティ&インクルージョン」にも積極的に取り組んでいる。これは多様性のある環境で互いを生かし合うことを指し、本社である米国VMwareは世界に先駆けて実践を進めてきた。こうした全体方針は日本法人でも変わらない。加えて、彼にはこれまでの経験で培われた強い思いがあった。

代表取締役社長 ジョン ロバートソンさん

元はカナダ生まれのカナダ育ち。大学時代に日本に興味を持ち、外国青年招致事業を活用して鹿児島県・種子島などで3年半暮らした。その後東京に移り、複数の外資系企業を経てヴイエムウェアに入社する。5年がたち、日本の企業風土に染まりきったころシンガポールに赴任。そして、環境の違いに愕然(がくぜん)とする。

「日本ではほとんどの社員が男性で、5年のうちに僕もそれが当たり前だと思うようになっていた。ところがシンガポールでは半数近くが女性で、現場の最前線で働いている。僕はカナダ人ですが、考え方はすっかり日本人だったので、カルチャーショックを受けました」

しかし、ショックはこの1回だけでは済まなかった。2年後に日本法人に戻ったとき、彼は再びショックを受ける。女性や外国人、海外経験者が圧倒的に少ない。人材にも意見にも多様性がない。翌年、社長に就任すると、ダイバーシティ&インクルージョンを強力に推進し始めた。

現在、同社の女性比率は設立当初の5倍以上。売り上げは就任後の3年間で倍になった。これはグループ各社の中でもトップの成長率だ。しかも、社員数を大幅に増やしたにもかかわらず離職率は10%以下を維持。自由で多様性のある環境が、社員のモチベーションにつながっているようだ。