食品大手の味の素は、2017年4月から「午前8時15分始業、午後4時30分終業」の「1日7時間15分勤務」を導入した。西井孝明社長は「特定の女性だけでなく、みんなが堂々と早く帰れるように変えたかった」と話す。終業時間の変化は、職場をどう変えたのか。現場からのリポートをお届けしよう――。

※本稿は「プレジデント ウーマン」(2017年12月号)の掲載記事を再編集したものです。

終業時刻は午後4時30分! 働きやすやく、成果の出る「改革」とは
▼味の素の現状
・食品メーカーのグローバル企業として人材の獲得は重要な経営課題であった。
・2000年代半ばまでは年功序列の社風だったが、世代交代の端境期でもあった。

朝7時半、味の素の社員食堂には、焼きたてパンの良い匂いが満ちている。なかには、勉強や読書をしたり、チームでブレストをしたりする社員もいるようだ。これは、同社が出勤時刻を早める取り組みの中で、社員に無料で軽食をふるまうようになって以来、よく見られる光景である。

コーポレート戦略部の和田直大さん(一番左)とチームメンバー。朝7時半には、食堂のモーニングサービスでパンが無料でふるまわれ、利用者も多い。

2017年4月から、味の素は朝8時15分始業、午後4時30分終業の1日7時間15分勤務に変更。所定労働時間を徐々に短縮し、実質的な賃上げにもなっている。20年までに所定労働時間7時間を目指すという。

なぜ終業が午後4時半か。15年に社長に就任した西井孝明氏は語る。

「ダイバーシティを進めるために、日本では特に女性の活躍が不可欠です。育休や時短など、いくらサポートする制度があっても、辞めていく人もいた。やはり特定の女性だけではなく、全体の時間を短くして早く終業できるようにする。それなら、心苦しくなく、堂々と早く帰ることができますよね」

これは西井社長の「働き方改革」の本気度の表れだ。女性活躍推進のためには「女性に優しい制度」の導入だけでなく、「全体の働き方」「風土」から、長時間労働を前提としない効率的な働き方に変えていく必要がある。わかっていても「全体」をここまで思いきって変えようとする企業は少ない。